2014年2月18日

(更新日)

シェイクスピアの今
図像学入門 Ⅳ

■内容■
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」という有名なセリフがシェイクスピアにあります。この言葉を発したハムレットは、手に何を持ちながら、どういう服を着て述べたのでしょうか。またリア王は、「神々よ、わしに忍耐を下され」と叫びます。この老王の頭の中には忍耐の姿が間違いなくありました。では忍耐はどんな姿だったでしょうか。

図像学というのは、こういう疑問に答えてくれます。図像学は、私たちを言葉だけの世界から目に見える世界へと連れ出してくれます。図像学の助けを借りることで、私たちは、シェイクスピアの作品を一読しただけではわからない、「はっとする」驚きの視覚体験をすることができます。

この講座では、この視覚体験をバネにして、受講生の皆さんに各作品の名セリフを実際に演じてもらいます。ロールプレイングを通じて、シェイクスピア作品を今の時代に蘇らせ、今、こうして生きていることの意味を考えます。

図像学はまた、シェイクスピア時代に独特なものの見方や考え方なども教えてくれます。シェイクスピア時代の見方・考え方・価値観が、今の私のたちの見方・考え方・価値観にどう対応し、どう異なっているのかを、受講生の皆さんとともに考えていきます。考える手段のひとつとして、受講生一人一人に「200字意見文」を書いてもらい、お互い楽しく意見を出し合い、これまでとこれからの自分の人生を再考してみることにします。

 シェイクスピアについて、受講してためになるのではなく、参加してためになる、そう


開講期:10月~3月 開講時間:午後3時30分~5時30分
開講日:全10回
² 10月4日(金)
² 11月1日(金), 11月15日(金)
² 12月6日(金), 12月20日(金)
² 1月17日(金), 1月31日(金)
² 2月7日(金), 2月21日(金)
² 3月7日(金)


■予定■(2013-14年)
《苦痛のシェイクスピアと無痛の現代》
(1)『ペリクリーズ』:紋章の秘密と忍耐
(2)『リア王』:年寄りと痛み

《摂理のキリスト教と応報のないポストモダン》
(3)『ハムレット』:因果応報と神の愛

《貨幣への愛と安らぎのない動物化》
(4)『ベニスの商人』:金儲けと憂鬱
(5)『冬物語』:死ぬことと愛すること


200字意見文原稿用紙




第1回 シェイクスピア:図像と今

スライドファイル
    配布資料

●今回扱う視覚芸術作品

 















フランツ・ハルス
「髑髏を持つ青年」
 

   











ジョルジョット・ド・モンテネィ
『キリスト教図像意匠集』 (1571年)



200字意見文問題 
問題 シェイクスピアは20年以上別居していたので、シェイクスピアの作品には恋愛にまつわる主題が多いという意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか、反対ですか。次の条件にしたがって書きなさい。

条件
1. 文字数は160字以上、200字以内とすること。
2. 2段落で構成すること。書き出しや段落の始まりは、1字下げて書くこと。
3. 段落の内容は次のようにすること。
  第1段落 このテーマについて「賛成」か「反対」か、を書くこと。
  第2段落 その理由や、理由のもとになった事実や経験を書くこと。
4. 理由は次の形式のどちらかを使って書くこと。
  形式1「なぜなら~だからだ。」
  形式2「理由は2つある。1つは~だからだ。もう1つは~だからだ。」




■第2回シェイクスピア『ペリクリーズ』:エンブレムの開示

講座用スライド(worksheet)
    配布資料
スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品



 
ボッティチェッリ「ウェヌス女神とマルス神

 

   
















ルーカス・ファン・ライデン
「若者の肖像」


200字意見文問題 
問題 この作品は、再生という神話に見られる出来事を取り扱い、神話世界と関連しているから不思議な事が起こるのだ、という意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか、反対ですか。上の条件にしたがって書きなさい。

[参考]
現実性と虚構のちがいは客観的なものではない。物それ自体のなかに含まれてはいない。それはわれわれの内に含まれている。つまり主観的にわれわれがそこに虚構を見るか、見ないか、によって、現実性と虚構との差が現われるのである。つまり、対象は、それ自体としては一度も信じることのできないものであったためしはない。
ポール・ヴェーヌ,『ギリシア人は神話を信じたか』44ページ




■第3回シェイクスピア『ペリクリーズ』:
 キリスト教に消される神話世界

講座用スライド(worksheet)
   
スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品

   














カルターリ『古代神話図像大鑑』 (1571年)

   














リーパ『図像集』

   




















ジョヴァンニ・ジュスティ
『ルイ12世の墓像』



200字意見文問題 
問題 結婚は、自分の内の知られざる別のタイプを発見し、忍耐をもってそれを育てることが真の目的だという、という意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか、反対ですか。次の条件にしたがって書きなさい。

[参考]
「結婚はある意味で、自分の内の知られざる別のタイプを発見し、それを育てることが真の目的であるかもしれない。違うタイプの男女が一緒に暮らし、もしお互いに忍耐強くて、相手に対する敬愛の情を失わなければ、お互いの考えや行動の中から、いろいろと学んで、それによって自分の中の未発達の心のはたらきを育てることができる。(秋山さと子『聖なる男女』)





■第4回シェイクスピア『リア王』:
 忍耐から道徳へ、道徳から通念へ

スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品

   













ジーン・ジャック・ボワサー『エンブレム書』(1593年)

   














マザッチョ
「聖三位一体」
1425-28年

   


















ミケランジェロ「ピエタ」(1498年-1500年)



200字意見文問題 
問題 リア王は娘たちの言葉を額面どおり信じる愚かさがあったために、死に至ったという意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか、反対ですか。次の条件にしたがって書きなさい。


[参考]
「彼ら[コーディリア、ケント、道化]は何れも、リア王を助けるためにただ、百度死ぬことをもいとわはなかつたであらう。また、彼らは実際、リアの魂を助けている。しかし、…彼らは皆悲劇に捲き込まれてしまうのである。」(ブラッドリー『シェイクスピアの悲劇』)




■第5回シェイクスピア『リア王』:
 シェイクスピアの突きつける疑問符

スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品

   













シモーネ・デイ・クロセフィッシ「聖母の予兆」14世紀頃

   













ボナウェントゥーラ・ペーテレス 「海の嵐」 1632年




■第6回シェイクスピア『ハムレット』:
 (1)あらすじを追って:嫉妬と近親相姦


スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品

   













ヨハネス・フッスリ
「ハムレット、ガートルード、そして亡霊」1780-1785年

   













フランコ・ゼッフィレッリ監督『ハムレット』1990年



200字意見文問題 
問題 ハムレットの狂気まがいの行動は、母が再婚したからだ、という意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか、反対ですか。次の条件にしたがって書きなさい。


[参考]
「後家の再婚は法律上は認められていたものの、二夫と交わる後家には淫乱のイメージが拭えなかった。そして、死んだはずの夫が帰ってくるといった筋の芝居に人気があったことからもわかるように、夫の死後も死んだ夫に忠節を尽すことは「美徳」とされていた。貞淑さが疑われることなく再婚話が持ち上がるためには、夫の死後かなり長い時が経っている必要があったのである。」(河合祥一郎『謎解き「ハムレット」』)





■第7回シェイクスピア『ハムレット』:生と死の多重光景


スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品

   













ホルバイン
「使者たち」1533年
 














ヤン・ステーン
「人間の生活」1665年
 




■第8回シェイクスピア『ハムレット』:歴史事件の多重光景


スライド(完全版)

●今回、言及する視覚芸術作品

   
























エドワードとメアリー・スチュアート
16世紀写本
 




























エディンバラ内のチラシ
1567年
 


『冬物語』(Anthony Sandys, 1866)