<運>は能力の同僚

 

エンブレム118

 

 

蛇がからむ杖ケーリュケイオンが、二つの羽を持って、

  アマルテイアの角の間に立っている。

つまりこの杖は、精神において透徹、語ることにおいてすぐれている人は

  ものに豊かに恵まれて金持ちになることをあらわしている。

 

 

 

美徳を圧倒する<運>

 

エンブレム119

 

 

カエサルの軍隊に圧倒されたあと、ファルサールスが

  市民の血にまみれるのを、彼はみた。

剣を胸に刺して死のうとしたそのとき、

  ブルートゥスは大胆にも口から次のような言葉をはいた。

「不幸な美徳よ、ただ言葉だけの先見の明よ、どうしてお前は、

  <運>を女主人として、成りゆきを<運>にまかせておくのか」。

 

 

 

<貧困>は最高の才能の持ち主すらをも

       進歩するのを妨げる。

 

エンブレム120

 

右手には石をもち、反対の左手には翼をもっている。

 「羽で私は持ち上がる一方で、同じだけ重荷で私は押し下げられる。

もしもいまいましい貧困が私を下に押しとどめないなら、

 僕は才能を働かせて高い城塞の上を飛ぶことができたろう。

 

 

 

<機会>について

 

エンブレム121

 

対話形式で

 

「この像は、シキオーン出身のリーシップスの作品」。「そういうお前は誰だ」。

  「あるゆるものを支配する者。時を静止させた瞬間」。

「どうして翼で立っているか」。「たえず飛び回るから」。「足に翼付きの靴を履いている理由は」。「微風でも、さっとあちこちに移るから」。

「なぜ右手に細身の刃物があるのか、教えてください」。「これは、どんな切っ先よりも

  私のほうが鋭いことを示す」。

「どうして前髪があるのですか」。「出会ったときに、捕まえられるため」。「ですが、

  またどういうわけで、後頭部ははげているのですか」。

「足に翼を持った私が逃げ去ってもよいというなら、逃げたあとになって

  後髪を引っ張られて捕まえられないためです。

質問をしている方よ、こんな意味をこめてあの芸術家が私を作り出したのです。

  みんなに忠告できるように、私は張り出しに立っているのです」。

 

 

 

突然の恐怖について

 

エンブレム122

 

軍団がばらばらになって逃げていくのをみて、

  「誰が角笛をふくのだろう」とファウヌスはいった。

 

 

 

賞賛すべきでないことを賞賛する人々へ

 

エンブレム123

 

ろくろく武装もしていない軍隊に不安になっていたアンティオクスは、

  捨て鉢になってガラタエ族の強力な軍団にあたった。

ルーカニアの牛の恐るべき力、怒り、長鼻がガラタエの騎馬隊を

  捕まえるやいなや{tum primum?}、敵は敗走した。  

そのために、戦勝記念碑を立てたとき、それに象の像を描いた。

  それに加えて、アンティオクスは味方にこういった。

「象というそれはものすごい野獣が救ってくれなかったら、我々は死んでいた。

  勝ったことはうれしいが、うれしい分だけ恥ずかしい」。

 

 

 

束の間の幸福について

 

エンブレム124

 

ひょうたんが高くそびえる杉のすぐ近くで育ち、

  立派な葉をつけたという。

杉の枝にからまって、杉の梢を越えたとき、

  ほかのどの木よりも自分のほうがすぐれているのだと思ってしまった。

そのひょうたんに、杉はいった。「この栄光もほんの束の間のものだ。というのも、

  お前を残骸にしてしまう冬がすぐにやってくるのだから」。

 

 

 

自分の損は、他人の得

 

エンブレム125

 

どう猛な雌ライオンはかぎ爪で、恐るべき野猪は歯で、

  それぞれ猛々しい武器を使ってぶつかりあい互いに傷を負わせる。

そのうちに、様子を見ようとハゲタカがやってくる。そして獲物をぶんどろうとする。

  栄光は勝者のもの、しかし獲物は他人のものとなる。

 

 

 

吉兆ではじめるべし

 

エンブレム126

 

凶兆で始めたことが良い結果を生むことはない。

  吉兆をともなって行ったことなんでも、益を生む。

イタチと出会うなら、なにをするにせよ、あきらめなさい。

  このとんでもない動物は、悪運の印を運ぶ。

 

 

 

跡形もない

 

エンブレム127

 

畑に実った作物を、あげくのはてにイナゴが略奪した。

  これがいろいろ苦労した末の最後の仕上げ。

東風にのって、無数の軍団が展開するのが見えた。

  それには、アッティラやクセルクセスの軍も及ばぬほどであった。

干し草、キビ、あらゆる小麦をダメにした。

  希望は隘路にはまり、ただ祈りだけが残っている。

 

 

 

不正に手に入れたものは浪費される。

 

エンブレム128

 

大食のトビが、食べ過ぎから悪心で身をよじらせながら

  こういった。「あれー、母さん、口から内蔵が出てくるよ」。

するとこういう返事だった。「なぜ泣くんだい。自分の内蔵だとどうしてわかるんだい。

  泥棒の身。まったく他人のものを吐いているだけじゃない」。

 

 

 

不幸はいつでもすぐそこにいる。

 

エンブレム129

 

同じ歳の三人の乙女が、自分たちのうちだれが最初に

  スティクスの河にいくのかと、サイコロ占い遊びをしていた。

サイコロを投げたところ、そのうちの一人に運が凶と出た。

  自分の運命に盲目のこの女はあざけり笑った。

そのとき突然、屋根が滑り落ち、女は頭を打って死んでしまった。

  女は大胆にも軽々しく運命を占い、自分が負っている運命を精算した。

不運の場合には、運ははずれることはない。

 

 

 

救済は足どり重く、災難はかろやかに。

 

エンブレム130

 

アーテー女神を天の座から地上へとゼウス神が落としてから、

  なんとまあひどい災いで人間が苦しむようになったことか。

この女神は俊足と機敏な翼で飛び、どんなことも

  不幸にふれずにはすませない。

そこで、ゼウスの子供のリースたちがアーテーの行く先々についていき、

  女神のする悪いことならなんでも直そうとする。

しかし、老年のためにのろま、すがめ、疲れやすい。

  しばらくたってやっと償いをする。