無鉄砲

 

エンブレム55

 

騎手はめくら滅法に引きずり回され、そしてまた手綱もひくが

  むなしい。その騎手を、口に馬銜(はみ)のない馬が引っ張り回す。

理性にはまったく支配されず、そして独自の判断で無鉄砲に動く者を

  決して軽々しく信ずることのないように。

 

 

 

 

無鉄砲な人について

 

エンブレム56

 

あなたは、父親の戦車の騎手となったパエトンが、

  火を吹く<太陽>の馬を大胆にも運転しているのをみている。

パエトンは地上にとてつもなく大きな火災を撒き散らしたあとで、

  無鉄砲にも座った車から、あわれにも落下する。

ちょうどこのように、若き日に野心にかられる数多くの王は、

  <運>の車輪に乗って星まで運ばれ、

そして大変な災害を人間と自分の身に起こした後で、

  自分の犯したすべての罪についには罰を受けることになる。

 

 

 

 

<激怒>と<憤怒>

 

エンブレム57

 

盾には憤怒のライオンの顔が描かれ、

  そして盾の一番上の余白には詩が書かれている。

「これは人間を恐れさせるもの。この盾を持ち主はアトレウスの息子」。

  こんなしるしを度量のあるアガメムノンはもっていた。

 

 

 

 

自分の力にあまることを大胆に敢行する者について

 

エンブレム58

 

寝ている間に、つまりヤニマツの木の下で気持ちよく睡眠し体を

  元気づけ、そして棍棒や他の武器をもっているうちに、

ピグミーの一団が、自分自身の力を十分に教えられてもいないのに、

  ヘラクレスを打ち倒し殺せるものと考える。

ヘラクレスは目を覚ますと、まるで蚤を殺すのように敵を殺し、

  そして獰猛なライオンの皮に[蚤のように]入りこんでいる者を追い払う。

 

 

 

不可能なこと

 

エンブレム59

 

どうしてエチオピア人を無益にもあなたは洗っているのか。ああ、おやめなさい。

  黒い夜の暗闇をだれも明るく照らし出すことはできない。

 

 

 

 

カッコウ

 

エンブレム60

 

地を耕すものども、すなわち田舎者を、どうして大多数の人々は「カッコウ」と

  呼び習わしているのだろうか。いったいどんな言い伝えの理由があったのか。

春先にカッコウは歌い、その時までにブドウを

  剪定しておかないと正当にも「怠け者」と呼ばれる。

カッコーは自分の卵を他人の巣に運び込む。それは、妻が姦通して

  寝室を裏切って、それを手渡される情夫のようなものだ。

 

 

 

 

コウモリ

 

エンブレム61

 

ソクラテスの弟子カエレポンはその名を鳥となったミニュアスの娘から採用したのだ、

  と作家たちはいっている。

その人の顔は黒く、声はキィーキィーといった。そんな

  印でこの人を汚すことができるのだった。

 

 

 

 

別なもの

 

エンブレム62

 

夕方にだけ飛ぶもの、昼光では独眼のもの、

  たとえ翼を持ってはいても、翼以外はネズミのものは、

様々な意味を付せられている。第一に、隠れていて、裁きを恐れる

  信頼のおけない名前をあらわす。

次に、天上のことを追い求めながら、

  霞目になり、誤ったことだけしか見ない哲学者の象徴である。

最後に、こっそりと二股かけて

  両方から信頼をえられない狡賢いものを象徴する。

 

 

 

 

怒り

 

エンブレム63

 

ライオンの尻尾は「アルカエイス」だと古人は言った。

  尻尾で刺激をして、ライオンは大いなる怒りを生む。

黄胆汁が昇り、黒胆汁によって腹立ちが激しくなってくると、

  ライオンはどうにも押さえようのない激怒を引き起こす。

 

 

 

 

自分に破滅を準備する人に

 

エンブレム64

 

雌山羊の私は、嫌々ながらいま狼に乳房で乳をはませています。

  だって先をろくろく読めない羊飼いが世話を命令するからです。

狼がやがて大きくなると、すぐに私の乳房のあとに私の体も食べることでしょう。

  邪悪はどんな好意にも心を動かされないのです。

 

 

 

 

<愚鈍>

 

エンブレム65

 

先祖以来かつてから名がオトがだからといって、私の詩のなかで

  君がオトゥスと呼ばれることになるのにびっくりしている。

長耳をして、ミミズクのような羽をもち、

  有能な捕鳥者が踊る鳥を素手でつかまえる。

そのために、愚鈍で容易に捕まるものたちを、オトゥスと呼ぶ。

  君にふさわしいこの名が、君にもつくのだ。

 

 

 

 

<忘却>は<貧困>の親

 

エンブレム66

 

腹をすかした大山猫が食べ物を噛んでいるとき、

  つまり、腹がすいたので捕まえた仔ジカをがつがつと食べているときに、

もし、いま手でおさえて食べ物を忘れて、大山猫が

  偶然に??alio後ろを振り返り、あるいは眼光の向きを変えるなら、

大山猫は不確かな獲物を捜しつづけるだろう−−それほど大山猫の<忘却>は

  大きいのだ。自分の財産を怠る人は、愚かにも他人の財産を求めるのだ。