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(形像文化の世界へ)

ようこそ。 西洋文化と日本文化の接点を、誤解と理解という視点から眺めています。

鈴木繁夫
 

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■同一の歌・篇あるいは同一の巻からの記事の場合、最初の段落はほぼ同じ内容が記載されていることがあります。
■ラテン語はローマ字読みでも西欧人に通じます。しかし、ラテン語の母音は長く読むものがあり、それをきちんと踏まえた方が正確な読みに近づきます。また詩では、韻律の関係から、単語の末尾の母音などが省略されることがあります。読み方に<詩>とあるのは、韻律を踏まえた読み方です。
 

Witty Remarks in Latin

ラテン語格言 >> 記事詳細

2019/02/26

高まる金銭欲

Tweet ThisSend to Facebook | by geoschita
Crescit amor nummi quantum ipsa pecunia crescit.
クレスキト・アモル・ヌッミー・クゥァントゥム・イプサ・ペクーニア・クレスキト
「金(かね)への愛欲は金が貯まるほど募る。」 (ユウェナーリス『風刺詩』第14歌139行)

 風刺詩は、ローマのラテン文学において独自に進展したジャンルで、人や社会がかかえる欠陥をあからさまに暴露する。ユウェナーリスは、風刺詩人として資格でのみ名高いといってよいが、暴露した欠陥に対して非常な憤りをぶつけている。引用は、日常での親の不適当な振る舞いが子供にとっての悪い見本となり子供にも影響するという枠の中で、蓄財に励む不適当な振る舞いに注意を促している。
 日本の浮世草子は江戸時代に開花した一大ジャンルで、ローマの風刺詩のように社会の風俗を描写しても、その振る舞いに対してはほとんど肯定的であった。だから浮世草子作家として名高い井原西鶴は、「銀(かね)をこのみ申候(もうしそうろう)はよろしからぬ事ながら、今の世の風義に御座候(ござそうろう)」(『万の文反古(よろずのふみほうぐ)』(1696)巻二の一)と述べて、金への愛欲が良いことではないと分かってはいても、金銭万能の社会風潮なのだからそれも仕方がないと肯定する。
 なおコンスタンティヌス帝(在位310~337年)以前の帝政ローマは、江戸時代の上方と同じく、銀貨で商取引が行われる「銀本位制」であった。したがって、「金への愛欲」の「金」の原語nummusは「貨幣」であり、銀貨が想起され、また西鶴の「銀」も「かね」と読み、銀貨(丁銀)が想定されている。
 

ユウェナーリスとほぼ同時代に発行された、アントニウス・ピウス帝(138-161年)のローマ銀貨(デナリウス)。
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