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(形像文化の世界へ)

ようこそ。 西洋文化と日本文化の接点を、誤解と理解という視点から眺めています。

鈴木繁夫
 

お知らせ

■同一の歌・篇あるいは同一の巻からの記事の場合、最初の段落はほぼ同じ内容が記載されていることがあります。
■ラテン語はローマ字読みでも西欧人に通じます。しかし、ラテン語の母音は長く読むものがあり、それをきちんと踏まえた方が正確な読みに近づきます。また詩では、韻律の関係から、単語の末尾の母音などが省略されることがあります。読み方に<詩>とあるのは、韻律を踏まえた読み方です。
 

Witty Remarks in Latin

ラテン語格言 >> 記事詳細

2019/07/28

有益の表裏

Tweet ThisSend to Facebook | by geoschita

Usque adeo latetutilitas

ウースクエ・アデオー・ラテット・ユーティリタース

「有益はこれほどまでに隠れている。」(オウィディウス『変身物語』6438行)

アテネが外国(夷狄)の軍団と交戦状態にあったとき、アテネを救ってくれたのは、トラキアの領主テレウスであった。アテネの領主パンディーオーンは、長女プロクネーをテレウスに嫁がせ、テレウスとの盟友関係を確立する。二人の間には男の子イティスが産まれ、その関係はますます強固になる。その意味で、この結婚はまさに「有益」である。

 ところが、この結婚は大変な破局を5年後に迎える。きっかけはプロクネーがアテネにいる妹フィロメーラとの再会を望んだことだった。その望みをかなえるべく、テレウスはアテネに行き、パンディーオーンにしばらくフィロメーラをトラキアに置かして欲しいと伝える。ところがテレウスはフィロメーラを一目見るなり惚れてしまい、トラキアに着くなりフィロメーラを陵辱する。陵辱が発覚しないよう、フィロメーラの舌を切り、小屋に軟禁する。そして妻プロクネーにはフィロメーラが事故で死んでしまったと不実な嘘をつく。しかしフィロメーラの機転により、プロクネーはこの妹の生存に気づき、妹を救い出す。そして二人で力を合わせ、テレウスに対する復讐として、イティスを殺し、その肉で作った料理を、何も預かり知らないテレウスに食べさせる。有益をもたらした結婚も、こうした大きな不幸をひそかに抱え持っていたのだ。

有益と思われることが不利益を抱え持つという意味に近い日本のことわざは、「禍福は糾(あざな)える縄の如し」があたる。縄は二本の藁の紐を交互により合わせることによって作るが、そのように人間が経験する幸いは実は不幸につながることがあり、またその逆もありうるという。

イティスを殺害しようとする母プロクネーとその妹フィロメーラ

マクロン 480年頃 ギリシア皿絵


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