「民主主義は最悪の政治制度」という逆説的チャーチル演説: タイムズ紙による要約 

 

 保守党党首であったチャーチルは、1947年11月11日に、労働党が与党であった庶民院で演説を行った。この演説は、「1911年議会法」の修正審議にあたり、11年当時、ロイド・ジョージ率いる労働党の閣僚として、この議会法制定にチャーチルが関与していたこともあり、「1911年議会法」制定にどういう立法意志があったのか、その説明をチャーチルに求められたときのものである。
 「1911年議会法」とは、貴族院(日本の参議院)は庶民院が通過させた財政法案について拒否権を発動する権利がないとするもので、この議会法によってはじめて庶民院が貴族院に優越することが定められた。この優越性をさらに強化しようとしたのが、「1911年議会法」の修正法案で、この法案は後に「1949年議会法」といわれることになる。与党労働党が、修正法案を提出したのは、党として、航空、製鉄、鉄道の国有化をめざしていたが、国有化法案が貴族院に阻止されることを恐れてのことであった。
 このチャーチルの演説の要約をタイムズ紙が翌日に、おおよそ2面にわたり掲載した。当時の読者は、新聞とラジオが主要メディアであったため、当日の演説をラジオで聞き逃した人でも、そこでどういう主張がどのようになされたのかがわかるように、発言の要が論理的につながるように抜き書きされている。したがって要約とはいっても、記者の視点からまとめられた意見というよりも、ルポルタージュにより近い。
 なお皮肉なことに、この要約には、「民主主義は最悪の政治制度」という箇所は引用されていない。

“Conditions For Reform Of House Of Lords.” Times, 12 Nov. 1947, pp. 4, 6. 

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