▶英訳を考える◀【状況:銀行破綻】 借り入れによって、貸し手が借り手になる
第一共和銀行によれば、預金者逃避の穴を埋めるために連邦住宅貸付銀行から高利の借り入れをした。これによって、銀行は、手持ち資産で稼げる以上の額を負債にたいして将来的に支払うことになってしまった。
◇英訳◇
First Republic bank said it filled the hole from fleeing depositors with expensive loans from the Federal Reserve and Federal Home Loan Bank. That left the lender facing a future where it would potentially pay more on its liabilities than it earned on its assets. (WSJ)

■ここに注目■
【1】《語法:名詞》 預金者逃避の穴は、日本語では「ケチャップがこぼれた」、「花瓶が割れた」のように事象が自然に起こったかのように表現し、人がある事象をもたらしたという主語を明示した形での表現を避ける。ここでも、「穴があいた」となるために、誰が穴を開けたかを曖昧にして、「逃避によって穴があいた」となる。ところが英語では、主語が明示され、主語が何かに力を及ぼすのが基本形なので、
ケチャップがこぼれた。→ I spilled ketchup.
花瓶が割れた。→ I shattered the vase.
そして「預金者が逃避することにより穴があいた」→「逃避する預金者が穴をあけた」→ feeling depositors made the hole となる。これを名詞句にすると「逃避する預金者が開けた穴」となるので、the hole from fleeing depositorsとなる。
【2】《語法:前置詞》 ~するために…したは、~するためにひかれてin order to を使うのではなく、前置詞の動詞化が働いていると見破って、~部分を主動詞、そこに…を前置詞で付加していく。 filled with loans
【3】《語法:名詞》 銀行は通常、貸し手なので、the lender としている。英語は同一名詞の繰り返しを避けて言い換えをするので、the bank といわずに the lender. ただしここでは第一共和は貸し手ではなく、 連邦住宅貸付銀行からの借り手 borrower になっているから、lender という言い換えには皮肉がこもっている。
【4】《構文:無生物主語》 これによってXは、Yになってしまったは、出来事+leave+目的語(X)+Y(現在分詞・過去分詞)の形を使う。この形は、XをYの状態にするでこれが日本語の「なる」と対応する。
【5】《語法:名詞》 将来的に支払うは、英語では分解して a future where ….. pay となる。これは、日本語はコトとモノとを分けて考えるために起こっている。~になるというときには、モノになるとはいわずにコトになるという表現をするため。例文では、支払う未来になるというモノ表現ではなく、コト表現にするために、将来的に支払うコトになるとなる。逆に英語は、コトとモノとの区別立てが曖昧で、支払う未来になるというモノ表現が可能である。また英語の原則は漠然⇒具体(限定化)なので、未来と漠然といい、それをwhere以下で具体化している。