❖豊かさ❖ 珍宝
Arabum gazae.
アラブム・ガーザエ
アラビアの宝物(ほうもつ)。
(ホラーティウス『歌章』1巻29歌1-2行)
■解説■
ローマはアラビアとの間で活発に交易を行っていました。特に珍しい高価なものを輸入しており、その中には宝石や香料(アロマ)も含まれていました。
旧約聖書「列王記」に登場するシバの女王(10:1-13)は、南アラビア出身で、そこは香料と香辛料の主要な産地でした。彼女がイスラエル王ソロモンを訪れた際、大量の香料を携えていたと描写されるのは、この背景によるものです。
▶比較◀
南(なん)越(えつ)珠(しゅ)厓(がい)の珍(ちん)、夜(や)光(こう)の璧(へき)、明(めい)月(げつ)の珠(しゅ)。
(司馬遷『史記』貨殖列伝〔前91年頃〕)
■解説■
南越(現在の広東・広西・ベトナム北部)の珠厓(産地名)から産する真珠という珍宝のことです。夜に光を放つと伝えられる、玉製(軟玉や硬玉といった宝石類)の璧(中央に穴のある円盤状の玉器)。満月のように明るく輝く真珠のことです。いずれも南方や異域からもたらされる稀少な宝物のこと。
中国では古くから「玉を以て宝とす」という言葉があるように、玉は単なる宝石以上の価値を持っていました。玉は人格や徳の象徴とされ、宗教儀式にも用いられていました。これは、ヨーロッパで香料が果たした宗教的・象徴的な役割と類似しています。

