◆愛◆ 貢君へのあしらい方

Quantum quisque ferat respiciendus erit.

クワントゥム・クイスクエ・フェラット・レスピキエンドゥス・エリット

持参してくる多寡(たか)に応じて、相手を値踏みせよ。

(オウィディウス『恋の歌』第1巻8歌38行)

■解説■
 ()手婆(てばばあ)(売春婦の斡旋者)がまだうぶな売春婦に教え(さと)すくだりで、自分のもとに通ってくる男たちに対してどういう態度をとるべきかを述べている。ここでは、男が自分にどれだけ(みつ)いでくれるのか、その多寡(たか)に応じて、男を値踏みしてよいのだという。と同時に、このセリフは、まず男から物をもらったら、「そんなにしてもらったら困ります」という風情で、目を伏せて膝に視線を落とし、慎みを装い、そして、目を上げてどれだけの貢物があるのかチェックする必要があるという意味にも取れる。なおローマ共和政末期には、貢物としてもっとも珍重されたのは、黄金よりも真珠であった。

真珠で飾られた腕輪 国立ナポリ考古学博物館

▶比較◀

女郎買ひ、珊瑚珠(さんごじゅ)()じめさげながら、この里やめたるは独りもなし

(井原西鶴『西鶴置土産』序, 1693年頃)

■解説■
 『西鶴置土産』は、遊蕩のあげく貧窮に落ちる男たちの姿を、ユーモアと哀感を混じえて描いている西鶴の遺作で、ここの言葉は、西鶴がその序文において述べている。ひとたび遊郭通いにはまると、金がある限り女郎と遊び続けるもので、金が底をつくまでこの遊びがやめられず、ついには貧乏のどん底に落ちるという既定路線を示している。なお「緒じめ」は、巾着(きんちゃく)(現在の財布)などの口が開かないようにするために、口の周りに通してある紐(緒)を締めるための玉などの具。ここではその具が、江戸時代には金より高いといわれた珊瑚であり、男が金をたんまりと持っていることを示唆している。


◆運命◆ むごい仕打ち
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◆忍耐◆再生する不屈の力
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◆死◆灰と影
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◆死◆老若は問わない
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◆死◆いつ訪れるかわからない
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◆死◆必然
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