イギリス文学でたどる結婚破綻・離婚
「恋愛で燃焼し、結婚で子孫と資産獲得、でも離婚は不可能」というのが、16-17世紀のイギリスの男女の愛についての考え方でした。結婚は、燃焼する恋愛とはあくまで別物で、子孫を残すための仕組みでした。これが19世紀頃から変化します。夫婦はロマンチックな関係にあり、互いにわかり合い、深い親密度をもった結婚愛を持つのがよいという観念が支配的になっていきます。とはいえ結婚したところ、相手が自分の性格・気質と一致していないという精神的理由や、経済的な基盤が確立できないといった物質的理由から夫婦関係が破綻することは、21世紀の現在とその事情は変わりません。しかし20世紀なかばまで離婚は事実上不可能でした。破綻した場合に夫婦関係がどのように変質し、また離婚せずに実質上の離婚を果たそうとするとどういう状況になるのか、それを描いたイギリス文学を比較文学の視点を取り入れながら追ってみます。
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破綻から離婚へ
1. 離婚に運命づけられた結婚、破綻の理由がある結婚
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』(1987). 『クレイマー、クレイマー』(Kramer vs. Kramer)
2. 聖書にみる妻の裏切りと和解
John Milton, Paradise Lost (1664) 第9巻・第10巻
3. 聖書にみる妻の裏切りと離別
John Milton, Samson Agonistes (1671)
4. 夫の嫉妬と妻の嫉妬は真逆
William Shakespeare, Othello (1602)
5. 離婚できないキリスト教と「離婚」ができるキリスト教
William Shakespeare and John Fletcher, Henry VIII (1623)
6. 重婚は罪、しかしそこに結婚愛がある
Charlotte Brontë, Jane Eyre (1847)
7. 相思相愛という幻想
Robert Browning, “Love in a Life” (1855)
8. 性格の不一致なら離婚するのが女性の権利
J. K. Rowling, Cormoran Strike Series (2013-). Rachel Cusk, Aftermath: On Marriage and Separation (2012).
鎌田敏夫『金曜日の妻たちへ』(1983)