◆大胆◆ 禁断を越える
Audax omnia perpeti/Gens humana ruit per vetitum nefas:/Audax Iapeti genus/Ignem fraude mala gentibus intulit.
(詩)アウダックス・オームニア・ペールペーティ/ゲーンスューマーナ・ルイッート・ペール・ウェティテューム・ネファース/アウダックス・イーアペティー・ゲヌス/イーグネーム・フラウデ・マーラ・ゲーンティブス・イーントゥリト
(散)アウダックス・オムニア・ペルペーティ/ゲーンス・ヒューマーナ・ルイット・ペル・ウェーティテュム・ネファース/アウダックス・イーアペティー・ゲヌス/イグネム・フラウデ・マーラ・ゲンティブス・イントゥリト
あらゆる試練に臆せず耐える人間という種族は、神に禁じられた非道へと突き進む。イーアペトスの子は臆せずに奸計をつかい、人類に火を持ちこんだ。
(ホラーティウス『歌章』1巻3歌25-28行)
■解説■
神は陸を海で隔てることで、人間が生まれた土地から移動できないようにしていた。ところが人間はたとえ難船の危険があっても、船を使って別な土地へと移動していく。海を渡ることは「非道」であるにもかかわらず、人間は大胆に渡っていく。こんな「非道」が続けばどうなるだろうか。ちょうどプロメーテウス(イーアペトスの子)が天界から火を盗み、それを人間にもってきた結果、健康で長生きしていた人間がかえって早く死ぬことになったように、人間は神の逆鱗にふれて早死にすることになる。なおプロメーテウスは、主神ユッピテル(ゼウス)の目を盗んで、天界にあった火をウイキョウの茎に隠して人間にもってきた。

火を授けるプロメテウス (ピエロ・ディ・コジモ 1515年頃 ストラースブルグ美術館 蔵)
▶比較◀
貧しくて分を知らざれば盗み、力おとろへて分を知らざれば病を受く。
(吉田兼好『徒然草』131段 14世紀前半)
■解説■
日本では、大胆であれ、改革せよ、というのではなく、分限を守ることが強調される。そして盗みなどの大胆な行為に出るのは、分限を自覚しない愚かさのためだと判断される。
