エンブレム基本語

原語訳語意味
Emblemエンブレム銘題(簡潔な教え)、図絵、そしてそれらを説明する解説文の三つで一セットになったもの。16世紀中葉にこの形態が確立し、以後およそ1世紀、西ヨーロッパで数多くのエンブレム本が刊行された。
Inscriptio銘題とくに一枚のエンブレムを構成する要素として、各エンブレムのページの冒頭に掲げてある短い格言風の文や句。銘題は銘mottoとしてよく用いられ、また逆に流布していた銘が銘題としてエンブレムのなかで用いられている。
Pictura図絵銘題とともに、一枚のエンブレムを構成する大事な要素で、銘題を図絵化したもの。図絵単独では、そこに描かれている事物がなにかはわかっても、それらの事物の相互関係から、図絵がどんな内容をあらわしているのか、不明瞭である。なお図絵を制作するのは、画家や彫物師であって、エンブレム作者自身ではない。
Subscriptio解説詩図絵の下についている数行にわたる詩(原語は「下段のテキスト」という意味)で、銘題と図絵とがどのように結びついているのかを、解説している。この解説においてエンブレム作者が自分の思想や道徳などを簡潔に伝えていて、作家の力量の見せ所になっている。しかしそうであるがゆえに、結びつきの解説を読んでも、その強引な結び付け方や数々の説教調に読者は辟易することがある。
Commentarii注解エンブレムの三要素(銘題、図絵、解説詩)につけられた注。作者自身によるものは、典拠など欄外に付けられることが多い。また編者によるものは、場合によっては膨大な量に及ぶ。

エンブレム関連語

Impresa (Device)私章王侯貴族や学者などの宮廷人が自らの信条を顕示するために、明瞭な図絵と簡明な銘とをペアにして作ったもの。英語では、銘図(device)とよばれる。シャルル八世(Charles VIII〔1470~1498〕)のイタリア侵攻などによって、フランスからイタリアに伝わり、イタリアで流行する。
Hieroglyphヒエログリフ(聖顕図像文字)ホラポッロンHorapolloによる『聖顕文字』(Hieroglyphica 1419年発見)に基づく表意図像文字。その大半はギリシア起源の寓意にもとづくこじつけ。本来のエジプト神聖文字との関わりは薄い。
Imago創像いくつかの既存の像やその像の一部分を、自分の創意で組み合わせて作られたあらたな像で、紋章や標章としてもちいられたもの。
Symbolumシンボルたんなる記号から、もののしるし、そして家紋や国の記章、エンブレムまで、すべてを包括してさす言葉
Numismaメダル刻印古代ギリシアの貨幣には、アテネの国紋であるフクロウが刻まれていたように、貨幣にはなんらかの意匠が刻まれた。ルネッサンス期には、自らの信条とともに、その心情を表す図絵をメダルに刻印する慣習があった。
Adagium格言人間一般の振る舞いとしてよく見られるが、意識的に顕在化させていない事象を、短い関係な言葉で言い表したもの。
sententia寸言主観的な思い入れのある格言で、意見なり、考え方なりを示している。
motto自らの行動するときの戒めや努力の目標などで、典拠は古典文学、格言などによることがおおい。銘は、銘を掲げている人の心のなかにどのような信条があるかを、外在化している。
medalメダル表麺には誰であるかを示す肖像とその名前があり、裏麺にはその人の銘(モット-)とその銘をあらわす図絵がある。ルネッサンス期にメダルのほとんどは鋳造されており、肖像や図絵はきわめて精巧な仕上がりになっている。なおメダルは、制作依頼主がごく一握りの仲間などに配布したもので、大切に保管された。けっして貨幣のように大量に出回っていたものではない。
badge私有記章記章は誰が所有しているのかを示すためのもので、従者や臣下、そしてその所有者の持ち物などにつけられ図案。格言などの銘はつくことがない。私有記章は、戦いでの集合地点を示すための記章旗(standard)の図案としても使われる。レンブラント「夜警」の画面中央左の大きな旗は記章旗で、紋章旗ではない。
banner紋章旗戦いでの集合地点を示すための記章旗(standard)と区別される。記章旗は長い竿に大きな長方形の旗がつき、旗には私有記章が図案化されている。これにたいして、紋章旗は家系にかかわり、貴族が用いるもので、四角い旗で、貴族の紋章が描かれている。紋章旗は、家の偉功などを相手の誇示する象徴的はたらきをもっている。なお紋章旗には、格言などの銘はつくことがない。