e-learning型学習の位置づけ
訳読型
20世紀までの日本における英語教育は、訳読型(図中のⅠ)がほとんどでした。母国語と格闘しながら英文で書かれた内容を正しく読み取るということに関しては、比較的優れた方法でした(本サイト内危うい英文読解および研く英語感覚)。しかし21世紀になりグローバル化が進むにつれ、日本人が聞く・話す英語の熟達度が低いという点が指摘されるにつけ、読む英語からコミュニケーションとしての英語の重要性が意識されだしました。
タスク主導型
そしてコミュニケーションとしての英語を学ぶ方法として、タスク主導型(図中のⅡ)が注目されだしました。これは、例えば教員が、自分たちで考えた新製品についての2分間の英語コマーシャルを作ろうといったタスク(課題)を与えて、コマーシャル構成に必要な英語を授業で教えて、学生に必要な基礎知識を備えさせた上で、学生グループがそれぞれその課題に取り組み、完成させ、クラスで発表するというものです(優れた例として、Matthew Kamden Barbee, Student video projects 本サイト内英語教員のためのリフレクティブ・プラクティス中のタスク主導)。
タスク主導型が、従来の対面式訳読型とは異なっているのは、学生同士がコミュニケーションの手段として英語を使わざるをえないということの他に、個人が自らの能力を発揮したいと思えばグループ内で相談しいくらでも発揮できるようになったことです。対面式訳読型では高い能力をもった個人であってもクラスの水準にあわせなくてはならないという縛りがきわめてゆるくなりました。ただし各個人がタスク達成にどれだけ積極的に参加するかは、個人の気質、能力、やる気などに大きく左右され、英語習熟度がタスク完了後に伸びる学生とそうでない学生との差が大きく出るようになりました。
e-learning型
学生の習熟度を均一に上昇させるということで注目されているのが、e-learning型(図中のⅢ)です。
21世紀になりWeb 環境が整備され、クラウド上に大容量の教材をストックできるようになりました。提供された学習教材を、学生は何時でも好きな時に、自由な時間だけアクセスし学習できます。しかも教材がクラウド上にあるために、管理者である教員にとっては、学生がいつ何時間アクセスし、教材の消化率や正答率がどの程度のものなのかということが一目瞭然となりました。学習活動の数値的可視化が可能になったのです。
ただE ラーニング型学習は、まだまだ初期段階であって、どのような教材をどのように学生に提供するのが最も有効なのか、学生はどのような学習方略(日数間隔・締め切り設定・ノルマ)をとるのが望ましい形なのかといった、もっとも基本的な点については、暗黒大陸(テラ・インコグニタ)です。
ただE ラーニング型学習の欠点は最初から明らかです。学生による一方的な教材へのアクセスで、そこには学生同士が議論したり、教員が助言を与えるタスク主導型のような双方向の交わりがありません。
反転型
双方向性を補うべく、またタスク主導型を取り入れて、2010年代中頃から登場してきたのが反転型(図中のⅣ)です。ここではクラウド上に教材はおいてあっても、それはあくまでも学生が授業前に観るなり聴くなりして、教材内容をあらかじめ習熟し、授業ではタスク達成やディスカッションといったようなことが中心となっています。ただ反転型はここ数年来の傾向で、大学の授業レベルで大きな成功をおさめたという事例はほとんどありません。これには、学生が授業前に教材に触れずに授業に出席する意欲の欠如、教員自身が学生の興味を引くような教材作成ができていない能力不足といった要因があります。
e-learning型学習の導入・管理・効果
以上の学習型を踏まえた上で、e-learning型について、大学で私自身がe-learning教材を利用した8年間の経験を踏まえて、
(1)どのような体制で学内に導入し、
(2)またどういう形で学生に提供し、
(3)提供された学生は、どの程度の時間数をどういう日数間隔で学習すれば学習効果が望めるのか
といった情報を提供します。
さらに、重要な知見として、
(4)学生自身が自律的に学習に取り組むことが必ずしも不可欠ではない
という点について、説明します。
e-learning 教材の導入から管理まで(見取り図)
実際にe-learning教材を学内に導入し、学生に授業外の課題として与えた事例に基づき、導入と管理のそれぞれの方法についてまとめました。次をクリックしてください。