エンブレム集というワンダーランド
エンブレム集 (emblemata) という、16世紀中葉から17世紀中葉まで、わずか100年間ですが、西欧できわめて流行した、知的文学ジャンルがあります。
エンブレムというのは、①短い題名、②図絵、③そしてその二つを説明する短い解説詩という、三つの要素からできています。
この形式で、一冊の本を最初に編んだのは、16世紀イタリアで市民法学者として活躍したアルチャートです。
エンブレムを読むと、シェイクスピアやガリレオの時代の人たちが、生きていくときに、どういう観念を大切と考え、どんな世界観をもっていたのか、図絵と文字という二つの媒体を通して知ることができます。
それだけではありません。西ヨーロッパの人たちが、怪獣をふくめた動植物や、ふだん目にする物事に、どういう心象をを抱いていたのかもわかってきます。それは、現代の私たちからすれば、まさにワンダーランドです。


1. エンブレムの利用と考案
2. 物語る図像の解釈
1 物語る芸術作品
2 2種類の物語り
3 難解な物語り
4 リーパにもとづく解釈
5 古典のルネッサンス的改ざん:擬形態
3. 図像解読事典の発見
..リーパとの出会い
..中世美術史家の衝撃
4. エンブレムの誕生
..エンブレムの創始者
..古典文学の教養と教訓
..エンブレムというジャンルの成立