◇愛のエンブレム◇ 52

BREVIS ET DAMNOSA VOLVPTAS.
Lumina delectant culices, perimuntque petita;
Sic nobis spes est optima causa mali.
Qui circumuolitat deceptus Amoris ad ignis,
Numquid naturam papilionis habet?
欲望ははかなく、有害。
炎は虫どもを喜ばせ、求め来たものたちを殺す。
人間にとっては希望がそれにあたり、不幸の最大の原因となっている。
欺されてアモルの炎の周りを飛び回っている者は、
蛾の習性をもっているといえないだろうか。
ひとつの喜びにかえて千の苦しみ
蛾はろうそくのまわりを喜んで飛ぶが、
炎のなかに降りれば、焼かれてしまう。
ちょうどそんなように、愛する者は愛の火を喜ぶが、
その高価な喜びを買い込むと、愛の炎のなかで死んで✒しまう。
❁図絵❁
アモルは、壁龕のある立派な部屋に置かれたテーブルに腕をおいたまま、テーブル中央の燭台にのった燃えるロウソクの炎をじっと眺めている。その炎の周りには蛾や小さな虫たちが何匹も飛び回っている。
❁参考図❁

ゴドフリート・スカルッケン (Godfried Schalcken)「ロウソクで照らされた恋人たち」1665-70年
ニヤリと笑った男性が窓越しにロウソクをかかげ、その炎に照らされた若い女性とともに外を眺めている。この女性の後にはすらっとした妖艶なウェヌス像が見える。男性はみだらな心を抱いて女性の所にやってきたようで、そこには目下、楽しみだけで苦しみの片鱗もない。なおスカルッケンはオランダ画家の中にあってロウソクの炎によって映し出される人物を数多く描いた。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:
典拠不記載:参照ペトローニウス「欲望にかられてこちらと思えばまたあちらへと旅を続けているトリュファエナ」(『サテュリコン』101節)。
〖注解・比較〗
死:肉体の交わりによって、精神が恍惚となるという意味もこめられている。
蛾:「夏虫の 身をいたづらに なすことも 一つ思ひに よりてなりけり」(古今和歌集 544)。「夏虫が灯火に飛び込んで身を焼き滅ぼしてしまうのも、私と同じように、「思ひ」の「火」によってであった」(高田祐彦 訳)。夏虫は、夏の虫の総称で、蛾の他に、ホタル、セミ、カなども含まれるが、ここではもちろん蛾のこと。
