❖豊かさ❖ 豊かさの極地
Babylonis opes.
バビローニス・オペース
バビロンの富。
(スターティウス『即興詩集』 第3巻第2歌137行)
■解説■
古代メソポタミアの都市バビロンは、その壮大な建築物や豊かな歴史から、古代ローマ時代にはすでに富と豪華さの象徴と見なされていました。スターティウスは、この詩の中で、ある人物の邸宅の豪華さを称えるためにこの言葉を用いて、「バビロンの富」に匹敵するか、それを超えるほどの壮麗さであることを強調しています。
スタティウスはしばしば、古代の都市や神話的イメージを用いて、贅沢・権力・美の極致を表現しています。なおこの言葉は、彼が「深い友情を抱く若者」と表現する軍人が、シリアの軍団に加わる旅立つ壮行詩のなかで使われています。

▶比較◀
九天(きゅうてん)闕上(けつじょう)の玉京(ぎょくけい)
■解説■
古代中国の宇宙観では、天空は九つの階層に分かれていると考えられていました。「九天」は、極めて高く、広大で、至高なる場所のことです。 闕は、古代中国の宮殿や城郭の入り口にあった、左右一対の楼閣(門塔)です。玉京は、道教において、最高神である玉皇大帝が住むとされる天上の宮殿を指します。したがって全体で、神々や最高神が住まう、美しく、神聖で、完璧なる都を象徴しています。それは、人間界からかけ離れた、到達不能とも思えるほどの、究極の崇高さと神聖さ、そして壮麗さを表現しています。長安や洛陽の栄華はこうしたイメージで捉えられていたようです。