◆大胆◆ 困難を乗り越える進行

Illi robur et aes triplex/Circa pectus erat, qui fragilem truci/Commisit pelago ratem/Primus.

(詩)イーリー・ローブル・エト・アエス・トーリプレークス/キールカー・ペークトゥス・エラート・クイー・フラギレーム・トルキー/コーミーシート・ペラゴー・ラテム/プリームース
(散)イッリー・ローブル・エト・アエス・トリプレックス/キルカー・ペクトゥス・エラト・クイ・フラギレム・トルキー/コムミーシット・ペラゴー・ラテム/プリームス

もろい船を残酷な海に最初に浮かべた人の胸には、樫と三重の真鍮でできた心があった。

(ホラーティウス『歌章』1巻3歌9-12行)

■解説■
 人間は自分の居場所をもち、神は陸を海で隔てることで人間が生まれた土地から移動できないようにしていた。ところが人間はたとえ難船の危険があっても、船を使って別な土地へと移動していく。最初に船を浮かべて自分の土地を去る人間の心のかたくなさは堅固な樫に象徴され、たじろがない感情は真鍮のような厚かましさによってあらわされる。ただし、樫と真鍮にかんしては、海に出ていく強固な決意をもった樫のように堅い心と、「三層の銅」で武装された揺るぎない心という解釈もある。しかしここで詩人は、人類最初の船人の気概をほめているのではなく、むしろ人間の分限をわきまえない危険な行為と考えている。

ローマ帝政期の船 (2-5世紀 3D復元)

▶比較◀

長風(ちょうふう)浪を破る 会(かなら)ず時有り、直(ただ)ちに雲帆(うんぱん)を挂(か)けて滄海(そうかい)を済(わた)らん。

(李白「行路難」詩 唐)

■解説■

大きな順風を受けて波を越えて進めるチャンスは必ずやってくる。それはまさに、帆をかけて雲のようにいっぱいに膨らまし、大きな海原に出ていき、海を渡るときだ。これは、困難があってもそれを乗り越える好機がきっとやってくるから、くじけずに待ち、その好機のときに大胆に進んでいけという意味。


❖言葉❖ 文体は生き方の反映New!!
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❖豊かさ❖ 満足する技法
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❖豊かさ❖ 向き合い方が肝心
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❖豊かさ❖ 執着からの自由
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❖豊かさ❖ 豊かさの極地
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❖豊かさ❖ 満ち足りた心が必要
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