◆金◆  徳より金

Quaerenda pecunia primum est, /virtus post nummos.

(詩)クワエレーンダ・ペクーニア・プリーメスト/ウィールトゥース・ポースト・ヌームモース
(散文)クワエレンダ・ペクーニア・プリームム・エスト/ウィルトゥース・ポスト・ヌムモース

第一は金の追求、美徳は金の次。

(ホラーティウス『書簡詩』1巻1篇53-54行)

■解説■
 ホラーティウスは、ローマ市民が自分の資産を増やすべく金を稼ぐことに明け暮れ、引用のような言葉を口にするので、それを嘆いている。そして心のどこかで、金を飽くことなく求めるその貪欲な精力といえども、悪徳を避け、美徳を積み、富を軽んじるまっとうな人生哲学で克服できると考えている。
 美徳よりも金に人間は魅惑されやすい。17世紀オランダのチューリップ投機で損害を被った芸術保護者マルテン・クレーステル、18世紀イギリスの南海会社(西インド諸島の奴隷売買貿易)の大暴落で科学者ニュートンは大損をし、さらには19世紀アメリカの二度にわたる大陸横断鉄道株の暴落、そして20世紀のアメリカ住宅バブルを考えると、その貪欲な勢力は衰えを見せない。

ローマ・カピトーウムの丘に建つユーノー・モネータ神殿。ここでコインが鋳造された。 (復元図)

▶比較◀

富を欲するか、恥を忍べ、傾絶(けいぜつ)せよ、故旧を絶て、義と分背(ぶんぱい)せよ。

(『荀子』大略 先秦)

■解説■

 人が富を増やすことを望むと、どんな恥辱にも耐え、なりふりかまわず金を求め、大切な旧友との信頼関係も絶ち、人としての道義もお構いなしになる。荀子(じゅんし)は性悪説の提唱者であるので、人間にはこうした性があると指摘し、だからこそ人間が善となるためには,そうした性に対して礼が必要と考えた。


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