恋・愛:不治の病
Nullis amor est sanabilis herbis.
ヌッリース・アモル・エスト・サーナービリス・ヘルビース
恋はどんな薬草を使っても治療できない。
(オウィディウス『変身物語』1巻523行)
■解説■
アポッロー神が、アモル神[キューピッド]に向かって、お前の弓矢には自分の弓矢のように、敵に傷をおわせ倒す力がないではないかと馬鹿にした。それに怒ったアモルは、恋を掻き立てる効能のある矢をアポッロー神に打ち込む。そして恋を退ける効能のある矢を河神の娘ダフネーに打ち込んだ。アポッロー神はこのダフネーに恋するが、ダフネーの方は神から逃げ去る。なんとしても自分のものにしようと神は追いかけ、走るダフネーを説得するべく語りかけた言葉の中の一節が、引用の言葉。

アポッロー神から逃げる乙女ダフネー(2-3世紀頃)(ハタイ考古学博物館[トルコ])
▶比較◀
笑止や憂世や恨めしや、思ふ人には添ひもせで。
(『隆達節』(1592~1615頃)
■解説■
好きなあの女の子と夫婦としてともに暮らすことができないのは、辛い、苦しい、恨めしいという嘆きをあらわしている。なお笑止は笑止千万の「馬鹿馬鹿しい」ということではなく、困ったことだという意味。また俗諺にも、「心の病は心の薬にて治すべし」とあって、嘆いたところで、それを治す薬がないことを教えている。
