◆戦争◆ 男性を喜ばせる戦争
Multos castra iuvant et lituo tubae/Permixtus sonitus bellaque matribus/Detestata.
ムルトース・カストラ・ユウァーント・エト・リトゥオー・トゥバエ/ペルミクストゥス・ソニトュス・ベッラクェ・マートリブス/デーテスタータ
たくさん人たちを喜ばせるのは、陣営、騎兵ラッパと歩兵ラッパの入り交じる音、母たちが毛嫌いする戦争。
(ホラーティウス『歌章』1巻1歌23-25行)
■解説■
人間には、競技、政治、経済などで栄光を獲得しようとする人や、安逸・戦争・狩猟を好む人もいる。そのように十人十色であるが、なかでも戦争好きは数が多いと、古代ローマの詩人ホラーティウスはいっている。騎兵はローマ軍では貴族(名門家系)が担当し、平民は歩兵であった。ラッパも騎兵はホルン型、歩兵はトランペット型になっていた。
なお、この言葉は、自分の志は詩歌による栄光であって、他の人たちの好みとは違うことを述べたもの。安直な反戦感情を述べているというよりは、むしろ戦争は男の気性にうったえ、戦争には勇猛さがつきものだといっている。

トラヤヌス帝記念柱からの模写(106–113世紀後半 ローマ)”Tuba” from William Smith. A dictionary of Greek and Roman antiquities. 1849
▶比較◀
国家の自衛上、または発展上止むに止まれないものもあるが、戦争のための戦争もある。戦争好きな英雄が一生戦争をして暮らしているやうなのは、一生金儲けにかかっている男や、色獵りにかかっている男と同じに、すでに一つの道楽みたいになっているようなのもある。
(徳田秋声「灰皿」『文藝春秋』[1937年10月])
■解説■
日中戦争開始から3ヶ月後、南京占領の2ヶ月前に、当時の日本人の好戦的な感情を、金銭欲などの嗜癖になぞらえて、暗に警告を促している。
