◆戦争◆ 特攻の精神

Una salus victis nullam sperare salutem.

ウーナ・サルース・ウィクティース・ヌーラム・スペラーレ・サルーテム

敗れたからには、助かるなどと思わないことが唯一の救いだ。

(ウェルギリウス『アエネーイス』2巻354行)

■解説■
 ギリシア軍に敗れたトロイアの兵士に向かって、トロイアの英雄アエネーアースが飛ばした(げき)。トロイアの城壁都市は燃え、神々の加護ももはや期待できない状況で、敗色に染まった兵士たちに向かって、最後まで戦おうと励ましている。一死、国に報いる覚悟の特攻精神を思わせるが、運と有能さが備わったアエネーアースの功で、配下の多くの兵士たちは戦線を切り抜け、脱出に成功する。

トロイアの稜堡(りょうほ)(城の攻撃用突出部分)(前1700-1250年頃)

▶比較◀

敗軍の(しょう)は、(もっ)(ゆう)を言うべからず。亡国の太夫(たいふ)は以って(そん)(はか)るべからず。

(司馬遷『史記』淮陰侯(わいいんこう)韓信伝 [前21年頃])

■解説■
 漢の将軍・韓信は「背水の陣」をひいて、趙の大軍と戦い、勝利を収める。この勝利の一因は、趙の名将・広武君李左車(こうぶくんりさしゃ)の提言が退けられ、趙が正面攻撃をしかけたためでもあった。生け捕りにした李左車に対して、韓信は次の征伐先である燕・斉の両国を落とすための戦略を尋ねる。そのときの李左車の返答がこの名言。自分は戦いに敗れた将軍であるので、勇ましく成功することについて語る資格はないし、滅んだ国の官僚でもあるので、国を保つ方法を提言すべきではないと答えている。なおアエネーアースは敗軍の将であったが、後にイタリアの地で建国の礎を築くのに成功している。