◆諸行(ものごと)◆ どこまでも続く
Ab ovo usque ad mala.
アブ・オーウォー・ウスクエ・アド・マーラ
卵からリンゴまでずっと。
(ホラーティウス『風刺詩』1巻3歌6-7行)
【解説】
ここで詩人は、古代ローマ社会において一目置かれていた歌手がいかに気まぐれな存在であるかを揶揄している。歌手は歌ってくれと頼まれると歌おうとしないが、気が向けばずっと歌い続ける、そのノリを指摘する。このときの「ずっと」が「卵からリンゴまで」。
ローマでの正餐は、古代ギリシアのアテネの饗宴と同じく、寝台に横になり片肘をつきながら食べていた。そしてフル・コースの場合、オードブル(gustatioアペタイザー)、メインコース(prima mensa 第1テーブル)、デザート (secunda mensa 第2テーブル)という順になっており、オードブルでは卵が出て、デザートではリンゴなどの果物が出された。そのために「最初から最後までずっと」という意味になる。
【比較】
牛の涎(よだれ)
「商売は牛の涎。」
(正岡子規編『日本の諺』1890年)
牛の涎は、なかなか切れずに長く垂れることから、どこまでも続くこと。長く続けることを、商売の努力にかけて、商売もコツコツと長く続ければ成功するという意味。
ローマではこのように横になりながら食事をした。