◆模倣◆下手な真似の結果

Decipit exemplar vitiis imitabile.

ディキピット・エクセンプラル・ウィティイース・イミタービレ

先例を誤って真似(まね)ると、真似た本人はうっとりしてしまう。

(ホラーティウス『書簡詩』1巻19篇17行)

■解説■
 詩人ホラーティウスは、公になった自分の歌集がギリシア歌人たちの摸作ではないかという批判を受ける。それに対する回答として、仮に自分の詩が模倣であるとしても、外面を真似ただけでそこに詩としての内実が伴わなければ、その模倣は真の模倣といえない。そのように模倣の結果が原型の水準に達していないなら、模倣した人の能力のなさがあからさまになってしまう。ということは、模倣は模倣でも誤った模倣は、本人の自己満足に終わってしまうのだと、ホラーティウスは教える。
 これに続いてホラーティウスは、詩人というのは酒飲みと相場が決まっているが、著名な自分がしらふであれば、ローマの多数の詩人たちもまねをして、しらふであろうとする。ホラーティウスその人を非難している当の連中自身が、ホラーティウスの真似をするではないかと皮肉をいう。

キリスト教が公認される前のローマでは、ミトラス教が有力であった。この宗教の教義(善悪二元論, 救世主到来,死後の不死)は、先行するゾロアスター教と酷似している。この宗旨の秘儀を象徴するのは(カラス)。

▶比較◀

()の真似する(からす)()

(日本の諺)

■解説■
 これは泳ぐ能力がそもそもない烏が、鵜の真似をしておぼれてしまうことをいっている。自分の能力を過信して人の真似をし、恥をさらすことであって、これはまさにホラーティウスが言いたいことをよくあらわしている。


❖言葉❖ 文体は生き方の反映
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❖豊かさ❖ 満足する技法
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❖豊かさ❖ 向き合い方が肝心
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❖豊かさ❖ 執着からの自由
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❖豊かさ❖ 豊かさの極地
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❖豊かさ❖ 満ち足りた心が必要
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