◆教育◆ 陶冶が不可欠

Doctrina sed vim promovet insitam/ Rectique cultus pectora roborant;/ Utcumque defecere mores,/ Indecorant bene nata culpae.

ドクトリーナ・セド・ウィム・プローモーウェット・インシタム/レクティーケ・クルトゥース・ペークトラ・ローボラント/ウトクムケ・デーフェーケーレ・モーレース/インデコラント・ベネ・ナータ・クールパエー・スククウリット

さて訓練すれば生まれながらの力はますます強くなり、正しく陶冶されると心は頑強になっていく。規律を欠いてしまうといつでも罪は生まれ、生まれつきの資質が崩れてしまう。

(ホラーティウス『歌章』4巻4歌33-36行)

■解説■
 詩人ホラーティウスと同時代人であった若き名将ドルーススの力と魅力を讃えた言葉の一節。ドルーススが勇猛なゲルマニアの部族を制圧しえたのは、家庭の養育がないがしろにされずきちんとしていたおかげもあったということ。人の優れた胆力や人格は「養育」(英語 nurture)によってその輝きを増すが、もし体を鍛えること、心を研くことを家庭がしつけとして子供に施さないと子供は堕落し、「自然」(英語 nature)の恵みである生まれながらの才能は腐ってしまう。家庭教育の重要さを説いている。
 なおドルーススの義父はローマの初代皇帝アウグストゥスであり、アウグストゥスの軍事面での右腕として兄ティベリウス(のちの二代皇帝)とともにゲルマニアの平定にあたった。

将軍ドルースス (タッラゴーナ博物館 蔵)

▶比較◀

金剛石も磨かずば 玉の光は添わざらん 人も学びて後にこそ まことの徳はあらはるれ 時計の針の絶間なく めぐるが如く時の間も 光陰惜しみて励みなば 如何なる(わざ)か成らざらん

(昭憲皇太后)

■解説■
 ダイヤモンドは原石では鈍い銀色だが、それに人が磨きをかけて初めて美しい光を放つようになる。同様に、人もどんなに資質に恵まれていても、鍛え努力しなくては徳のある人間になれないし、しっかりとした業績を残すことができない。
 作者は、明治天皇皇后、一條美子(はるこ)(1848-1914)。この言葉は唱歌として親しまれ、太宰治『富嶽百景』でも、執筆活動がうまくいかない「私」が自分を励ますためにこの歌を思い出している。


❖人格❖ 職業ではなく人格による評価
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◆死◆恐怖を抱かない
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◆不幸◆現状に満足できず他を求める
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◆運命◆人をもてあそぶ女神
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◆無秩序◆混沌
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◆無秩序◆自然発生と四大
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