◆楽しみ◆ 好きだと上達

Hic amor, hoc studium.

(散文)ヒーク・アモル・ホーク・ストゥディウム

これが好きで、こんなことに熱心だった。

(オウィディウス『変身物語』14巻634行, ウェルギリウス『アエネーイス』11巻739行)

■解説■
 オウィディウスでは、森の妖精ポモナは、園芸においては抜きん出ており、また園芸が好きで好きでたまらず、接ぎ木、剪定、水やりと果実(ポムム)の育成に余念がなく、誰よりも園芸に巧みであった。恋愛の対象は果実であって、異性には関心がなかった。そういうポモナの態度がこの名句のように表現されている。
 ウェルギリウスでは、アルバ・ロンガ(後のローマ)の支配権をめぐり、新参者アエネーアースが在来の英雄トゥルヌスと争うが、その争いのさなかでアエネーアース側についた王タルコンが味方を叱咤激励したときの言葉。王は、トゥルヌスの留守を任された女傑カミーラの前に怖気づいた兵士たちに対して、お前たちが欲し望むのは、愛欲と酒だけだといって舌鋒鋭く攻撃する。
 この名句は、熱心に打ち込んでいる対象によって、その人の振る舞いへの称賛にも批判にもどちらにもなる。

果実の妖精ポモナ (2世紀後半 ナポリ考古学博物館)

▶比較◀

器用さとけいことすきと三つのうち、すきこそものの上手なりけれ。

(『()(かく)17回』[1723])

■解説■
 松尾芭蕉が一目おいていた宝井其角が口ずさんだ句で、其角の17回忌に編まれた逸話集に記載されている。この句では、生まれながらに備わった「器用さ」も、技芸に習熟しようとして励む「稽古」も、上達するには重要な要素ではあるが、その2つに比べてみても、そもそもその技芸に自然に心がひかれてしまう「好き」こそが、上達への決定的な要素であるということ。