◆恋・愛◆ 敏感さ
Quid non sentit amor?
クイッド・ノーン・センティト・アモル
愛していると、気づかないことがあるだろうか。
(オウィディウス『変身物語』4巻68行)
■解説■
イギリス文学でもっとも悲運な恋人のカップルといえばロメオとジュリエットだが、ローマ文学ではバビロンの都のピュラムスとティスベーということになっている。この二人は両親の反対があり、相思相愛であったにもかかわらず、互いに会うことができなかった。しかし家は隣同士であった。宅地を仕切る塀があったために、隣ではあってももちろん行き来はできなかった。
あるとき、この塀に貫通している小さな亀裂があることを発見する。その亀裂は塀が建てられた当初からあったのだが、これまでに誰も気づかなかったものだ。それを評して、詩人オウィディウスは、「恋していると、気づかないことがあるだろうか」、つまり、恋はめざとく、自分たちの思いを遂げるためなら普通には気づかないことも気づくようになると述べている。

ローマ邸宅の塀 (1世紀頃)
▶比較◀
恋の道には女が賢(さか)しい。
(上田秋成『世間妾形気(せけんてかけかたぎ)』一)
■解説■
塀の亀裂を、女性、男性のどちらが先に見つけたとは、『変身物語』には書かれていないが、日本であるなら、おそらくそれができるのは女性の方であろう。恋をすると、女性のほうが機転もきけば、要領もよいということを、この名言は教えている。
