the= それですべて
例えばクリニックに行って白内障を宣告され、手術を受けるのか、あるいはこのまま放置するのかという選択があると、医者から言われた場合に、患者である私は、
You’re the doctor.
といえます。
the の教科書的な説明に従うなら、the は特定できる誰かということですから、「あなたは医師です」、つまり看護師ではないし、薬剤師でもないという意味しか取れません。しかし、診察室には私とその医師しかいないわけですから、「あなたが医師です」ということは、「私は患者で、あなたは医師です」ということになります。しかしそういう区別にどれほどの意味があるでしょうか。
ここでのtheは「それですべて」という意味です。「あなたが私にとっての医師のすべてです」、他にも医師はいますが、「私にとってはあなたこそが医師なのです」という意味です。つまり、「先生の言うことは何でも聞きますから、ここで私に指示や判断をして下さい」という意味です。
同様の例として、職場の仲間と食事に一緒に行って、何を注文しようかと相手に尋ねたところ、
You’re the boss.
といわれれば、お前の選ぶメニューは何でも聞くから、それに決めて下さいという、ややおどけた表現です。
また
You’re the guest.
というのもあります。
相手の家に招かれて食事がテーブルに出てくるとき、相手が忙しそうなので、なにか手伝いましょうかといったところ、こう言われれば、「なにもしなくていいです」、「どうかそのままで」という意味です。「私にとってはあなたはお客様、それも大切なお客様なのですから」ということです。a
