◆堕落◆ 容易な道
Facilis descensus Averno.
(散文)ファキリス・デースケーンスス・アウェルノー
アウェルヌスへ下るのは容易。
(ウェルギリウス『アエネーイス』6巻126行)
■解説■
アウェルヌスはイタリア・クマエにある湖で、ここに冥界の河の水が流れ込むと信じられていた。そのため、アウェルヌス湖は冥界の別称として用いられた。トロイア人の英雄アエネーアースが、クマエの女預言者シビッラに、亡き父に会いたいので、冥界に下る許可と手助けを求める。預言者は、冥界に下ることは容易だが、冥界から地上に戻るその道のりが厳しいと諭したときの言葉。通例、なにかとてつもない不幸な状態に簡単に陥ってしまうときに使われる。
またこの名句は、英語では「地獄への道は善意で舗装されている」(The road to hell is paved with good intentions.)という名言へと変わり、善意からあることを行っても、その結果は予期せざる不幸な結果を招くことがあるという意味で使われる。なおこの名言は、18世紀のイギリス人作家サミュエル・ジョンソンのもの、あるいは14世紀イタリアの作家ダンテの言葉の英訳とされることもあるが、二人の著作にはこの名言はない。

リチャード・ウィルソン「アヴェルヌス湖」(18世紀後半)。画面背景に見えるのはナポリ湾。
▶比較◀
魔道は此世の地獄。
(竹田出雲 他『大塔宮曦鎧』[1723])
■解説■
悪の道に堕ちるのは容易で、この今生の世において悪への報いを受けて、地獄で受けるはずの苦しみをいま受けることになるという意味。
