◆詩◆ 話の核心

In medias res

イン・メディアース・レース

物事の中途へ。

(ホラーティウス『詩論』148行)

■解説■
 ローマ文学の黄金時代の詩人ホラーティウスによる詩論は、西洋文学における詩の書き方の規範を提供するものとして20世紀まで大変に珍重されてきた。引用は、書き方として竜頭蛇尾を警告した後に記載されているもので、書き出しを何から始めるべきかへの注意。
 物語の流れを機械的に分ければ開始と中間と結末という三つの部分になるが、ホラーティウスは中間から詩(この時代は、詩といえば叙情詩・叙事詩・演劇をさした)を書き出すように進めている。これは彼の独自の発想ではなく、トロイアー戦争を歌ったホメーロスの『イリアース』は、戦争10年目の出来事からその語りが始まっている。このような注意をホラーティウスがしているのは、戦争を語るのに、その事の発端やさらにその発端の遠い因縁から詩を歌い始めるような愚を詩人はえてして犯してしまうからである。
 なおホラーティウスは「中間」を機械的な中央とは考えていなかった。詩の聞き手が興味をもって引き込まれるような、話の中での中心をさしており、それも大団円へと詩人が急いで進むことを感じさせるような中心を想定していた。そのためにこの引用句は、前置きを長々とする人に向かって、何が言いたいのか肝心のこと、話の核心を述べて欲しいときに使われる。

ホメーロスの『イリアース』8巻433-47(1-2世紀 BerlPap 蔵)

▶比較◀

出発が間違うと、途中で気がついてもなかなか其処(そこ)から()けきれぬものである。

(斎藤茂吉『作歌実語紗』〔1947年〕)

■解説■
 ここでいう「出発」とは書き出しのことで、書き出しにしたがって、それに続く内容や構成も規定されてしまう。だから書き出しには十分に注意をはらう必要がある。そして書き出しを誤ると、内容・構成も歪むだけではなく、その歪んだ枠に作家の創造力がはまってしまい、歪んでいることに途中で気づいても、創造力のヴェクトルがそちらの方向に向かっているのでその枠から逃れがたい。


❖言葉❖ 文体は生き方の反映
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❖豊かさ❖ 満足する技法
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❖豊かさ❖ 向き合い方が肝心
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❖豊かさ❖ 執着からの自由
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❖豊かさ❖ 豊かさの極地
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❖豊かさ❖ 満ち足りた心が必要
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