◆君主◆ 秩序への期待

Lucem redde tuae, dux bone, patriae.

ルーケム・レッデ・トゥアエ・ドゥクス・ボネ・パトリアエ

すぐれた指導者よ、祖国に光をもたらしてください。

(ホラーティウス『歌章』4巻5歌5行)

■解説■
 ホラーティウスは、ローマ初代皇帝アウグストゥスが遠征からローマに戻ること(前13年)をどれほどローマが待ちこがれ、また皇帝がひとたび帰還すればローマがきわめて秩序だった社会となるだろうと歌う。そうした秩序がもたらされることを、詩人は「光をもたらす」とまで褒め上げている。
 アウグストゥスの遠征は、勝利を収め、成功したとはいえその戦果はささいなものであった。しかし皇帝の治世は行政・軍事政策において抜きん出ており、またすでに「ユリウス正式婚姻法」(前18年)を成立させ、離婚を良風に反する行為として社会的秩序維持に努めていた。

「最上」という称号を元老院から贈られた、五賢帝の一人・トラーヤーヌス(98-117年)(年代未詳, ルプトティーク博物館, ミュンヘン)

▶比較◀

海は百川を(おさ)め、(よう)の大なる有り

(中国の諺)

■解説■
 海はありとあらゆる川を受け入れ、その懐の深さは計り知れないという意味。政治指導者は多種多様な意見を受け入れる大きな心をもって治めるべしという戒めになっている。アメリカのオバマ大統領が訪中したとき、習近平はこの「海納百川」を引用し、文化間の違いを越えて交流し互いに学び合うというメッセージとしてこの言葉を送った。
 なおこの諺は、アヘン輸入の禁止を提言し、アヘン戦争のきっかけを作った政治家・林則徐(1785〜1850年)が執務した建物の門柱に記されていたことでも有名。


❖人格❖ 職業ではなく人格による評価
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◆死◆恐怖を抱かない
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◆不幸◆現状に満足できず他を求める
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◆運命◆人をもてあそぶ女神
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◆無秩序◆混沌
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◆無秩序◆自然発生と四大
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