◆善悪◆反脆弱性をもたらす心構え
Segnius homines bona quam mala sentiunt.
セーグニウス・ホミネース・ボナ・クアム・マラ・センティウント
人間とは、悪いことよりも良いことに鈍感に反応する。
(リーウィウス『ローマ建国以来の歴史』第30巻21節)
■解説■
カルタゴの名勝ハンニバルは、ローマを攻囲することまでこぎつけたが、撤退を余儀なくされる(第二次ポエニ戦争)。攻囲を解かれた(良い)ことにローマ市民は喜んだかといえば、その逆に、ローマの将軍たちがカルタゴ軍を撃破できなかった(悪い)ことに不満をいだいた。このように人間は、将来にリスクを残すことを嫌い、現在受けている恩恵を軽々しく考える傾向にある。この言葉は、ナシーム・タレブが、反脆弱性(外乱や圧力に出会うことで、人の潜在能力が発揮されかえってその適応力が高まること)をもたらす心構えとして紹介している(『反脆弱性: 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』(ダイヤモンド社, 2017))。

▶比較◀
漸を杜ぎ、萌を防げば、則ち凶妖銷滅す。
(『後漢書』丁鴻伝, 南朝宋)
■解説■
小さな問題や兆候を軽視せず、きちんと受け止めれば、大きな問題となる前に未然に防ぐことができるという教え。丁鴻は、後漢時代の儒者・政治家で、その優れた政治手腕と高潔な人格で知られ、数多くの弟子を擁した。この言葉は、丁鴻が宮廷の腐敗や不正を憂い、その根絶を訴えたときに述べたもの。なお「漸」は事の始まり、「杜ぐ」は抑えるという意味。