◆死◆ 死の前の平等
aequa lege necessitas/sortitur insignis et imos;/Omne capax movet urna nomen.
アエクワー・レーゲ・ネッケシタス/ソルティトゥル・イーンシーグニース・エト・イーモース/オムネ・カパークス・モウェト・ウルナ・ノーメン
平等な法に従って、<必然>は、際だった人々にも、最底辺の人々にも籤を引く。たっぷりはいるその壺は、動いて万人の名[がついた小石]を混ぜてはき出す。
(ホラーティウス『歌章』3巻1歌14-16行)
■解説■
<必然>は死と同義で、<必然>がくじを引くとは、死がいつなのかわからないが必ずやってくることをあらわす。ローマ時代のくじのやり方は、壺の中に名前の書かれている小石を入れ、壺を振ってそこから出てきた石に書いてある名前の人が当たりというもの。死が当たるくじを入れた壺には、万人の名前を書いた小石が入るほど大きく、またその口も広い。だから秀逸した人にも極貧の人にも、その当たりくじがいつやってくるかわからない。これは、死は万人に不測のうちにやってくるという意味で、そこでは「平等な法」が貫徹されている。
ホラーティウスはこの言葉を若者、それも良家の子弟に向かって語っている。とすると、この言葉は、たんに「死を憶えよ」(memento mori)と教えているだけではなく、事実はこういう事態なのだから「足るを知る者」となれと勧めていることになる。

▶比較◀
冥土の道には王なし
(『世話尽』「曳言之話」[1656年])
■解説■
死はこの世での身分の差に関係なく誰にでも平等にやってくる。また死後の世界には、この世での身分の差が消えて皆平等である。この俚諺には、ラテン語の引用文にみられる<必然>といった主語がなく、自然にそうなるものだというが発想が根底にある。
