◆不幸◆現状に満足できず他を求める
Cui placet alterius, sua nimirum est odio sors.
クイ・プラケト・アルテリーウス・スワ・ニーミールム・エスト・オディオー・ソルス
他人の境遇をうらやむ連中は、自分の境遇をもちろん憎む。
(ホラーティウス『書簡詩』1巻14篇11行)
■解説■
詩人ホラーティウスは、ローマから離れた荘園で普段は暮らしている。ところが、知人の葬儀のため一時的に荘園を離れ、目下ローマに滞在している。このローマ滞在期間、荘園の管理を奴隷の一人に任せている。荘園に残された奴隷は、見世物や大浴場のあるローマでの生活にあこがれている。他方、ホラーティウスは、自分がすっかり馴染んだ荘園での生活やその周囲の自然がなつかしくなっている。
こういうすれ違い状態を評して、人間はえてして自分がいま置かれている境遇をいとわしく思いがちであると教える。そしてそういう思いを抱くことは愚かで、自分の境遇に満足できるような心性を持つことこそが賢明だという。
▶比較◀
身、、福中(ふくちゅう)にありて福を知らず。
(諺)
■解説■
幸せな生活を送っていても、その幸せを感じない人がいる。満ち足りた生活に恵まれながら、不満を言い、もっと欲しがり求めようとする人がいる。現状に満足できず、満足できると自分で想像する別な状態を思い描いて、その状態に憧れて、せっかくのよき現状を肯定できない人への叱責になっている。