◆無秩序◆自然発生と四大

Discors concordia

ディスコルス・コンコロディア

不一致の調和。

(オウィディウス『変身物語』第1巻435行)

■解説■
 生命の発生について、「すべて大地がひとりでに生み出したもの」とオウィディウスは述べている。19世紀の科学者パスツールが細菌による生物の発生を科学的に証明するまで、生物は土などの無生物から自然に湧いてくるという自然発生説が支配的だった。オウィディウスの自然発生を肯う言葉は、ローマ時代には標準的な考え方であった。 
 また生物発生に関して、もう一つの常識があった。それは、この世の中のすべてのものは四大(地・水・火・空)からできているという考え方である。この四大はそれぞれ別個の性質をもち、互いに不和で「不一致」なのだが、人間にせよ、その他の生き物にせよ、この不一致なものが結合して一応の調和を保ちながら、一つの生き物として生命を維持していると考えていた。
 オウィディウスに話を戻せば、この詩人は、ナイル河のデルタ地帯で「水」が春になると氾濫し、「土」(四大の地)を湿らせ、さらに陽光(四大の火)によって暖められるので、生物が発生するとも述べている。引用はそうした自然発生について、敵対関係にあるものが合わさり一つになることが、発生に好都合なのだと教えている。 
 なお、詩作には、「不一致の調和」とは逆の「調和した不調和」(disconcordia concors ディスコルディア・コンコロス)という修辞効果がある。これは、本来は相容れないはずのふたつの事柄の間に、明らかな類似をみつけて、提示することをいう。たとえば、男性が恋人から遠く離れて旅に出ても心は離れないという状態を、図形に使うコンパスの二本の脚に喩えるといった綺想(きそう)をさす。

▶比較◀

水火(すいか)、器物(うつわもの)を一つにせず。

(『日葡辞書』1603-04年)

■解説■
 水と火のように性質のまったく異なるものは、同じ器に入れておくことはできない。つまり、性質の相反するものはけっして調和しないということ。


◆死◆恐怖を抱かない
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◆不幸◆現状に満足できず他を求める
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◆運命◆人をもてあそぶ女神
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◆無秩序◆混沌
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◆無秩序◆自然発生と四大
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◆運命◆ むごい仕打ち
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