◆無秩序◆混沌
Rudis indigestaque moles
ルディス・インディーゲスタクエ・モーレース
生のままで、秩序だっていない塊(かたまり)」。
(オウィディウス『変身物語』第1巻7行)
■解説■
塊とは、「神あるいは、ひときわすぐれた自然」が混沌での騒乱を鎮めて、諸元素を分離独立させ、天と地、陸と海に分け、水が循環するように世界を秩序だてる、その直前の騒乱状態をさしている。これはキリスト教において、創造主が混沌から宇宙を作り、天地を分け、次々と被造物を作り出していくことと重なり合う。

▶比較◀
名無し、天地の始めには。名有り、万物の母には。
(『老子』第1章 春秋時代[前6世紀])
■解説■
天地が生じる以前から「道」はあるが、それは人間の言葉では名づけようがない。とはいえ、万物を生み出す母なる天地が誕生した後では、名で呼ぶことができるようになる。陰と陽の絡まり合いから天地ができあがっていくというのが中国の思想であり、またその思想を受容した日本の考え方。そこには、キリスト教のように創造主と被造物という二元対立の観念は希薄で、創造主のような人格を持った活動体が天地を創り出したとはあまり考えない。