◆恋・愛◆ 一蓮托生

Vivam, si vivet; si cadet illa, cadam.

ウィーウァム・シー・ウィーウェト;シー・カーデト・イッラ・カダム

あの女(ひと)が生きている限りは僕も生き、あの女が死ぬなら、僕も死ぬ。

(プロペルティウス『詩集』2巻28b歌42行)

■解説■
 佳人薄命という言葉があるが、ラテン文学では、女性が自らの美しさを誇ったために、ウェヌス女神などから罰をくだされ、早逝する逸話がいくつもある。プロペルティウスはそんな例をいくつかあげて、目下、病床にある自分の恋人にむかって、死んだときに、どうしたらよいのか、アドバイスをする。アドバイスをしながら、自分が恋人をどれほど深く愛しているかを、やや諧謔的に述べたときの言葉が引用文。ここでは、死んだ恋人は冥界へ行くために三途の川(スティクス)を渡ることになるが、その川の渡し守カローンにむかって、恋人と自分は一蓮托生だから、恋人を舟に乗せるなら、自分も乗船させろという。もし船客が一人と決まっているなら、彼女と自分を同時に乗せられないから彼女は舟には乗れない、つまりこのまま彼女は生きながらえるのだと主張する。

渡し守カロン(右) (前440-430))

▶比較◀

私は立去りたかったのだ。この見覚えのある私達のみじめな景色と、心の模様から。そうして、見上げるばかりの巨大な女性と、野の果を走りたかった。対等の愛慕の声を交わしたかった

(檀一雄『リツ子 その愛』(1969年))

■解説■

戦争末期に結核に侵された妻を献身的に看病するが、日に日に衰える病んだ女性ではなく、健康も肉も備えた女性への憧憬を捨てきれない気持ちを語っている。多くの女性遍歴を重ねた太宰治の盟友であったことが暗示するように、檀もさまざまな女性関係をもつ無頼派小説家であった。


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