所有代名詞とthe: 所有代名詞は「所有」か?

まず英語を習ったことのある人なら、なんとなく変だぞと思うのは、「私の学校」という言い方です。「私の学校は名古屋市の郊外にあります」というとき、             

My school is in the suburbs of Nagoya.

私の学校は名古屋の郊外にあります。

自分が学校を「所有」し、町長でも校長でもないのに、こんなことをいってよいのだろうかという軽い不安に襲われます。ましてや、この学校が大学ともなれば、”my college” などと、経営者でもないのに、大それたことを言ってよいのかと、さらに不安のボルテージはあがっていきます。

似たような例として、”my bank” についてもいえます。

There is a rumor that some of the local banks in Japan are suffering from huge deficit, but I don’t care much about the rumor. My bank is the largest in Japan.

噂によると日本の銀行には 巨額の債務を抱えて 苦しんでいるものがあるらしい。でもそんな噂なんか気にしないな。私の銀行は日本で1番大きいからね。

このように私に「関係」していれば、 my school はオーケーですし、銀行の頭取でも株主でなくとも、my bank でよいわけです。

 ただしこのようにいうのは、関係についてなにか差別化のねらいがあります。学校の場合でいえば、彼はいまは東京の都心にある大学に通っているということが話題になっていて、そこで私の学校はなんと都会になりそびれた名古屋のそれも郊外にあるといったことになります。

 ちなみに所有代名詞の所有は、「所有格」なのでこのように呼びますが、「所有格」ではなく、「関係格」とよぶべきだと主張する英語研究者がいます。これは卓見だと思います。そもそも所有格は英文法書ではpossessiveとなっていますが、英文法書の原型であるラテン語文法書ではgenitiveです。その原義は「生まれたもの」(gignereの過去分詞形からの派生)ということで、ある物事がそこにあるだけではなく、誰かとの関係においてそこに生じていると考えられるからです。