◆貞淑◆女性が貞淑な理由

Casta est, quam nemo rogavit.

カスタ・エスト・クワム・ネーモー・ロガーウィット

誰からも誘われないから、あの(ひと)は貞淑なのだ。

(オウィディウス『恋の歌』第1巻8巻43行)

■解説■
 ()手婆(てばばあ)(売春婦の斡旋者)がまだうぶな売春婦に教え(さと)すくだりで、女性は貞淑を保つ必要はないという。男たちが戦場に出かけているとき、留守を預かる女たちは不倫に走るものだが、なかには貞淑な女性もいる。しかしそれは美貌が大したことがないので誘惑してくれる男性がいないからであって、美徳への心がけがしっかりしているからではないと断言する。そういえば、ユリウス・カエサルは「あらゆる人妻の夫」という異名をもち、美人妻には目がなかった(モンタネッリ『ローマの歴史』中公文庫 p. 200)。

サテュロスがテーバイの王妃アンティオペの衣服を引き払う 2世紀頃, ガズィアンテプ・モザイク博物館(トルコ)

▶比較◀

柏舟(はくしゅう)(みさお)

(『詩経』「柏舟」, 春秋時代[前8世紀頃])

■解説■
 (えい)(中国の一国名)の世子(せいし)である共伯(こうはく)が早死し、その妻・共姜は父母に再婚を強要される。しかし未亡人は、亡き夫のために操を守り通すべく断固再婚をはねつけ、その悶々とした気持ちを「柏舟」の詩として表現したことに由来する。「柏舟」は、堅牢な木である(ひのき)で作られた舟で、堅い貞淑な心の(たと)えになっている。


◆愛◆ 貢君へのあしらい方
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◆愛◆ 恋をすると兵士になる
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◆貞淑◆女性が貞淑な理由
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◆自然◆ 本性は変えられない
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◆詩◆ 規則と推敲
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◆時◆ 破壊者としての時
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