仲正昌樹. (2009). 『今こそアーレントを読み直す』講談社 (1)

○人間:公的領域にかかわる活動をする人
○私的領域:活動する人間からは、切り離して考える

ギリシア・ローマの「人間性」:

成人の男子で、家長の地位にある市民を基準に形成された人間らしさという観念。

人間らしさとは 政治に関与する市民が身につけておくべき基本的な教養

「活動」する人間:

アレントの三区分:(1)労働 (2)仕事 (3)活動

マルクス主義:

(1)仕事を含んだ意味での労働((1)+(2))を人間の類的本質とみなす

(2)労働:自然に対して積極的に働きかけ、皆で共同で利用できる有用なものを作り出すこと

アレント:

活動:言語や身振りによって他の人の精神に対し働きかけ説得しようとする 営み

人間関係:人と人と心的に結びつける絆であると同時に距離を設定する。

距離の設定:物理的な暴力、動物的な衝動のようなものによって一体になって動くのではなく、言語的なコミュニケーションを介して、人格的に相互作用する

言語と複数性

民族: 国民国家が形成される以前から存在し、人々の意識の深層に根付いている言語を中心とする文化的アイデンティティーを共有する集団

ナショナリズム:言語とそれを使用する人たちの思考は一体である。→ 民族あるいは国民ごとに固有のものの見方があるので、外来の文化の影響を排除し、言語を中心とする文化の純粋性を守るべきであるという排外的な思考

公的領域における政治

人間の条件:複数性を生み出す活動

政治:有限な資源をなるべく効率的かつ公正に配分するためのツール

政治本来の姿:物質的な利害関係やしがらみより自由な市民たちが 自分のためではなくポリス全体にとって何が良いことであるか共通善について討論しあう営み

人間らしさ:政治に取り組むことをどうして市民たちは他の市民を説得するコミュニケーションのための各種の技法知識を身につける。

政治的動物:活動を通して各人が、コミュニケーションの技法・教養を磨き、複数性を生み出す

公的領域と私的領域

私的領域としての家:各家族の生活の場である近代の家とは異なる。

(1)奴隷を抱え農業や工業を組織的に営む

(2)家は経済の単位

(3)経済はそれぞれの家の私的領域の内部で運営されていたので、物質的な利害関係をめぐる問題を政治公的領域に持ち出す必要がなかった

(4)物理的な暴力による支配が行われ、食物や生殖などに関わるヒトの生物学的な欲求の充足が図られる

公的領域としての政治:基本的に暴力ではなく、活動で影響を与え合う自由な領域

(1) 他の市民の前では人間らしく行儀良く活動actos演技している

公と私の関係:

家の中で動物的な態度を遠慮なく見せることができるおかげで、政治に参加する際には緊張を保ちながら集中してポリスの共通善を考える人格となれる。

現代の問題点:

公的領域において公衆から認知され複数的な視点からの論議の対象になり得る公共性が欠けている

公共性と私秘性

Public:市民たちの目の前に露わになっている

共和制:市民たちの目の前に露わになっている、共通に認識されている事柄の総体・体系

市民社会での社会的領域

<1>市民社会:公的な関係が私秘的な場所であったはずの家の中に入り込んでいる。

(1)家:家長の代わりに労働を引き受けてくれる奴隷がいない。→家長は労働から開放されない

(2)家族のメンバー:子供も含めて対等な市民。家長の所有物のように扱い暴力的に支配することはできない

(3)法的な関係が全面的に私的な場の家に入り込んできた

<2>市民社会:家が経済の基本単位ではなくなり社会全体で労働生産体制が組織化される

(1)公/私2分法の解体

(2)人間としての活動の堀崩しに繋がった

(3)家の外で営まれるようになった経済を軸として人々の間に成立した半公的・半私的な領域

社会的領域:social realm

(1)私的利害を中心に共同で行動する

(2)充分に討論を行うこともないまま共通の利益を追求する

(3)行動の不可避的に均一化

大衆社会における疎外とプライバシー

市民の思考停止:経済的利害を中心に画一的に振る舞うようになる

疎外:人間が作った作品や制度などが逆に人間を支配するようになる

疎外の克服:労働のプロセス全体を労働者階級の手に取り戻す

アレント

市民の均一化:組織化された生産体制の下で人々の行動様式がさらに均一化されてしまう

親密圏の誕生:社会領域において疎外が進行し「人間らしさ」が失われていくにつれ 人々は親密圏の中に人間らしい魂の繋がりを求める

家:私的領域から経済的な生産機能が取り除かれて、親子夫婦などごく身近で親密な人たちからなる関係性

プライバシー権: くつろげる空間にほっておいてもらう権利

限界:ポリス的な環境の中で形成された人間性をそのまま保持し続けることはほぼ不可能

共和主義

共和主義:自分の属する共同体の政治に参加する各市民の責務を重視する。政治的コミットメントと自由を表裏1体のものとする

Constitution:憲法+政治組織体の構成

二つの自由

マルクス主義:解放 liberty

(1)人類はもともと原始共産性社会において自由に生き活きと労働していた。

(2)搾取するもの搾取されるものを2階級という仕組みが生まれたことによって 不自由になっている

(3) 外的な障害物を除去しさえすれば人々が自由な状態へと自然に回帰するという

アレント

他人の権利を侵害しない限り最大限の自由を認め価値観の多様性を許容する

ルソーとかわいそうな人たち

ルソー:「不幸な人々」への「共感compassion」を人間としての自然な情の発露と見なし、それを自分たちの追求する革命的な”政治” の原理にする

アレント:共感の姓字は討論を活発化しパースペクティブを複数化することには繋がらない

全体意志:自らの利益を求める個々人の特殊利益の総和

一般意思:国家が意思を持った1つの人格であるかのように国家それ自体に属する意志

自然人への共感と偽善の嫌悪

偽善と人格=仮面

法的人格:法廷においてヒトが「法」によって役割を与えられた「人格」として振る舞う

市民:公的領域において各市民が活動主体となって、他の市民にアピールするために、良き市民としての「仮面」を被って「活動=演技」する

人格:ヒトが成長する過程で”自然” と備わってくるものではなく、「公衆」の目を意識した「演技=活動」において演ずべき「役割」

仮面の效果

自由の構成

自由:構成すべきもので、解放によって自然状態に戻るのが人間にとっての自由ではない

市民:制定した憲法の枠内で各人が自由に活動し憲法に書き込まれた公共善の探求実現を目指して討論を重ねてゆく

憲法:市民の活動の基本的枠組みを作る

アレントと公民権運動

市民的不服従:個人が自らの良心にのみ基づいて法律に違反する行為をするのではなく複数の人たちが合意に基づいて連合する