◇愛のエンブレム◇ 38

QVO PERGIS, EODEM VERGO.
Corpus vbi Dominæ est, ibi cor reperitur amantis:
Et licèt absit, eam sperat, anhelat, amat.
Instar solisequi, quocumque ea pergit, eôdem
Dirigit ille oculos, cor animumque suum
君が向かうところに僕は向かってしまう。
恋人の肉体があるまさにそこに、恋する男の心は見つかるのだ。
そしてたとえ肉体がなくとも、心はその恋人をあこがれ、あえぎ、愛する。
ひまわり✒のように、女がどこへ行こうと、
そこに 男は自分の眼を向け、心はその想いを向ける。
愛の輝ける太陽
ひまわりの花が太陽の進む方向に身を曲げるのと同じく、
愛する男も自分の恋人の方に向かってしまう。
男の想いは女に釘づけになり、男の視線は女に投げかけられる。
女は、男心が向かう輝く太陽なのである
❁図絵❁
庭で中腰になったアモルは、まるで呪文でも唱えるかのように、空から光を放つ太陽をその左手で指し、右手では庭に屹立するヘリオトロープを指さしている。
❁参考図❁

サー・アンソニー・ヴァン・ダイク (Anthony van Dyck)「ひまわりと自画像」1632年頃
オランダの画家ヴァン・ダイクはイングランド国王チャールズ1世庇護と寵愛を受けた。画家は、その王から拝受したメダル付き黄金ペンダントを見せながら、指で大きなひまわりを示している。画家の男心は絵を描くことと王への忠誠心へと向かったようで、この後には王の意を受けて、イングランド女王の女官であった貴族の娘と結婚する。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:
典拠不記載:
〖注解・比較〗
ひまわり:原文は「太陽を追うもの」となっており、ひまわりやヘリオトロープなど走日性をもつ植物全般を指す。こうした植物は、献身や愛の象徴であった。参照オウィディウス『変身物語』4巻190-270行[➽世番]。
ひまわり:「宜、主を恋ふ誠、誠に犬馬に逾え、徳を仰ぐ心、心は葵蕾に同じ」(万葉集 巻5 864-7に付けられた書簡)。「自分があなたをお慕い申す誠心は、まことに犬馬がその主人を慕う情よりも勝って居り、あなたの徳を仰いで居る自分の心は、ひまわりが太陽に向うごとくであります」(佐佐木信綱 訳)。葵蕾はひまわり。太宰府に赴任した大伴旅人からの書簡にたいして、都にいる吉田連宜が宛てた返書で、この後に吉田の歌が4首続く。この返書中から引用した一節に示されているのは、男性同士の友愛である。男性同士であっても、愛があれば心は相手に向かい、その下にあることがわかる。
