▶英訳を考える◀【状況:忠誠心】 能力の重視から、会社への忠誠心は薄くなる
目下、労働市場では、人の勤め先よりもその人の能力が重視されるので、雇用主に対する忠誠心は次第に薄くなってきている。
◇英訳◇
As competencies become more important than firm prestige in the current labour market, many employees are increasingly less loyal to their employers. (BBC)

■ここに注目■
【1】《日英語認知の相違:日本語認知の基本》 目下、労働市場ではは、日本語では最初に共同注視枠をもってくるために文頭だが、英語では「誰・何が何をする」が基本表現なので、共同注視枠は「誰・何が何をする」の後に補足情報として文末に置かれる。
【2】《語法:名詞》 人の勤め先⋯能力。勤め先の訳として、where they workが思い浮かぶが、対比されるのが能力なので、勤め先は節ではなく名詞句にする必要がある。勤め先は、どの地域で働いているかではなく、名の通った会社で働いているかなので、firm/company prestige となる。その他の候補としては、organizational status、employer’s reputation などがある。
【3】《二項対立:旧情報⇒新情報》 能力が重視されるという句は、「XではYなので」(労働市場では……ので)という節全体なかで、末尾近くにに置かれている。これは日本語では強調したい情報が文末近くに置かれるため。他方、英語では、肝心な情報は比較的文頭近くに置かれるので、接続詞の後に 能力 competencies がくる。
【4】《構文:無生物主語》 忠誠心が⋯薄くなってきている。英語では「誰・何が何をする」、つまり動作主が主語となって何かをするという型をとる。これに対して日本語ではある与えられた状況の中で、人がどういう振る舞いをするかを、人の存在を文の背後に隠しながら表現する。そのために日本語では、誰がと明示せずに、「忠誠心は」と無生物構文になる。しかし英語では動作主が主語になるので、動作主である人が主語になる。ここでの動作主は、雇用主に対立する被雇用者 employees となる。この文を英訳するのが難しいのは、日本語ではあえて言及しない「人」を、あぶり出す必要があるから。
