フランシス・フクヤマ『信頼:社会徳と繁栄の創出』

Francis Fukuyama, Trust: The Social Virtues and the Creation of Prosperity (1995)

相互信頼が繁栄を生み出す

 ここでの信頼とは、相手が責任をもって振る舞い、公共善にそくした行動にたいする期待である。経済上の繁栄の創出は、(1)血縁に基づく会社、国家主導の経済によるよりも、(2)未知の人とスムーズに築ける相互信頼に基づく会社や、民が自由に活動できる経済によって可能となる。相互信頼や自由な活動は、(3)強制ではなく自発的に生じる対外的交わり(sociability)や(4)豊かな社会資本(国のインフラ・文化・福祉教育制度から組織・個人間の人間的つながり)によって保証される。
 (1)の国(イタリア,フランス,中国,韓国)では血縁・国家が邪魔をして(3)と(4)を枯らし、商取引業務を狭める。その逆に、(2)の国(アメリカ,ドイツ,日本)では、商取引業務コストが安く、取引も組織も拡大していく。2020年代の今、中国・韓国は大企業を育て上げ、繁栄を享受している。またイタリア・フランスは主として文化を軸にした経済活動のおかげで衰退はしていない。経済繁栄予言の書としては外れた部分もあるが、信頼という道徳基準を経済の中軸に据えた議論は、アダム・スミスにも通じる、人間性開花のための経済繁栄へと目を開かせてくれる。

保護中: 高野陽太郎 『鏡映反転-紀元前からの難問を解く』(岩波書店, 2015)
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