無生物主語: 無生物主語の作り方


無生物主語:「主語+動詞」を名詞句に変える

 無生物主語が凝縮された表現であると別項で述べましたが、無生物主語というのは、実は「名詞構文」と呼ばれる「主語+動詞」を名詞句へと凝縮する方法が、たまたま主語として利用された場合と言い換えることもできます。「主語+動詞」を名詞句にするとは、
   ① 動詞を名詞に変える
   ② 主語がその名詞を修飾する
というように変形することです。
 たとえば「ジョンはノーベル賞受賞を拒否した」という文なら、通常であるなら
(1) John refused to accept the Noble Prize.
これを名詞構文にするためには、
   ① refused → refusal (時制は無視する)
   ② John’s refusal
という変形が必要です。①と②をまとめると、“John’s refusal to accept the Noble Prize” となります。

「ジョンはノーベル賞受賞を拒否したので、マスコミは騒ぎ出した」は、私たちなら、
△(2) As John refused to accept the Noble Prize, the mass media made a fuss about it.
と書いてしまいます。しかしこれは名詞構文、それも無生物主語を使って、
(3) John’s refusal to accept the Noble Prize caused a huge commotion in the mass media.

 これがわかると、「人民の、人民による、人民のための政治は地上から消え去ることはない」というリンカーンの有名な言葉の意味がわかってきます。原文は、
(4) Government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.
Governmentは政府ではなくgovernを名詞化したもので、そこに本来ならthe people’sという言葉が修飾する形で、 The people’s government  となっていたと考えられます。リンカーンは「統治する」ことと「国民」との関係が、「国民が統治する」(government by the people)ことだけにかぎらず、まだ他の関係もあると考え、of や forといった前置詞を使って動詞の名詞化 governmentを修飾させています。ですから、
   of は、王ではなく国民にその権利の由来がある統治、
   for は、王や貴族のためではなく国民全般(アメリカ市民のみで、アメリカ国土に住む外国人や奴隷は入らない)を配慮した統治を行う
ということになります。


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