無生物主語の肝:凝縮と共通理解
無生物主語:相手のとの共通理解があり、縮めて言いたい
無生物主語を日本語にどう訳すか説明するときに、その無生物を
①「~のために(人)は…のようになる」 (原因・理由)
②「もし~すれば(人)は…になる」 (条件)
と訳し、人を主語として訳すといった指示が書いてあります。たとえば
(1) A Fifteen-minutes drive will take you to an airport exhibiting vintage aircraft.
この公式にあてはめると、「もしも車に15分乗れば、あなたは年代物の飛行機を展示している空港に着くでしょう。」となるわけです。
実はネイティブ・スピーカーと会話をしていると頻繁に感じることなのですが、私たちはついつい次のようにいってしまいます。
(2) If you drive your car for fifteen minutes, you will arrive at an airport exhibiting vintage aircraft.
斜字体部分は旧情報に属することで、旧情報から新情報へという流れに沿っていて問題はないのですが、旧情報に費やす言葉の数が多すぎて、新情報に到達する前までに聞いている方の緊張がこれでは緩んでしまうのです。相手に新情報を緊張感が途切れない状態で伝えるために、旧情報を凝縮する必要があります。そこで活躍するのが無生物主語なのです。
さきほど無生物主語を日本語に訳すときには、理由・原因・条件と書きましたが、これらはそれぞれ
since 主語+動詞
because 主語+動詞,
if 主語+動詞
といった接続詞によって導かれる節に対応しています。
また人を主語に立てて訳すということは、その節に続く主節において、今一度、同じ主語が繰り返され、異なった動詞をもう一つ立てることになります。単語をたくさん連ねる必要があり、非常に手間なのです。ところが、(1)と(2)を比較してみればわかるように、無生物主語の(1)の文は、無生物主語によって接続詞とその節内の主語が省略でき、節内の動詞も他の要素とともに名詞に凝縮できるので、新情報へとさっとたどり着けるのです。
空港に自動車で行きたい人から、道端で空港への道を尋ねられたら、無生物主語がおおいに活躍します。
(3) A right turn at the second traffic light on this road will point you straight to the airport. The signs will guide you to it.
この道を真っすぐ行って二番目の信号で右に曲がると、空港への道になっている。標識にもそういう指示があるよ。
文頭の無生物主語、「この道を真っすぐ行って二番目の信号で右に曲がる」は新情報ですが、いま尋ねる方も答える方も道端にいて、空港までの道順を頭に思い描いているわけですから、即座に共通理解として成り立つ情報なので文頭にきても違和感はありません。また空港までの道順を示す標識があることも、共通理解事項なので、いきなりtheをつけて “the signals” として文頭においてもよいのです。そしてここではもちろん「接続詞+主語+動詞」の内容が無生物主語として凝縮されています。
無生物主語が共通理解と凝縮という二つの原則にしたがって使われることがわかると、次のような二つの文を出して、両者は同じ意味を伝えていて、無生物主語の文(4)のほうが、人を主語にした(5)の文よりも、「英語としてより自然な表現」という説明は、これらの文が使われている状況を無視した的外れな指摘です。
(4) Heavy rain kept us from going out for sightseeing.
豪雨があったので、外に出て観光ができなかった。
(5) We couldn’t go out because of heavy rain.
(4)が使われる状況は、バングラデッシュに旅行にいったが、ちょうど雨季にあたっていて、観光を予定していた当日には雨脚が強くて驚いたということが話し合われているようなときです。それに対して(5)はバングラデッシュに行ったが、観光もせずにホテルにその日はずっといたといったことが話題になり、その理由はテロが起こったからではなく、例年になく雨季の雨脚が強かったからだということになります。そして(4)のような状況では、私たちは先ほども述べたようについつい次のよういってしまうのです。
(6) Since we had heavy rain, we couldn’t go out and had to stay at our hotel all day long.
豪雨があって、外出しようにもできなかった。だから一日中ホテルにいた。
しかしこの状況では、(6)は(4)のような言い方をしたほうが、「英語としてより自然な表現」で、会話の流れによどみを起こさせなくて済むのです
