◇愛のエンブレム◇ 69

AGITATA REVIVO.
Ouid. Vt paenè exstinctum cinerem si sulphure tangas,
Viuet, & ex minimo maximus ignis erit:
Sic nisi vitâris, quidquid reuocabit amorem Flamme redardescet, quae modò nulla fuit.
Viuis in extremis ignoti partibus orbis,
揺すぶられると、私は生き返る。
オウィディウス ほとんど消えかかった灰でも、硫黄をかけると、
火は、小さかったのに、生きかえり、大きくなる。
同じように、愛を呼び覚ますものならなんであれ、それを避けないと、
さっきまで消えていた炎はまた燃え上がるだろう。
失恋はすぐに癒える
吹き消されたロウソクは、火の気がまだ残っているうちに、
すぐさまもう一度吹きかけると、火がつく。
同じように、偶然に消えた愛も、よみがえることがあるが、
時期にかなっていなくてはならない。そうでないなら吹いても無駄。
❁図絵❁
戸外でアモルが燭台にのったロウソクに向かって息を吹きかけ、ロウソクの火を大きくしている。
❁参考図❁

ヘリット・ファン・ホントホルスト (Gerrit van Honthorst)「売春斡旋女」1625年
暗闇の中、ロウソクの炎に照らされた女性がにっこり笑いながらリュートを見せている。リュートはオランダ語で女性器をあらわし、女性の派手な帽子、胸の谷間までみせるドレスが暗示するように、この女性は娼婦である。そして暗い画面左の老婆は売春斡旋女(女衒)である。こちらに背を向けている若者は、財布の紐を解きながら、目の前のロウソクの炎のように、欲情を燃え上がらせている。
〖典拠:銘題・解説詩〗
典拠不記載:参照プープリウス・シュルス「愛していると、ちょうど松明のように、煽られると、ますます大きくなっていく」(Amans, ita ut fax, agitando ardescit magis)『警句集』[➽31番]。
オウィディウス:[➽世番]『恋愛治療』731-734行[➽43番]。詩人は、つまらない女への恋慕の情が断ち切れない男性に対して、その恋から冷めるための手段を教える。その一つが、その女性を思い出さないことだといい、比喩として消えかかった灰に硫黄が触れると燃え上がるという実例を引いて、そのようなことのないように戒める。
▶比較◀
ロウソク:「春蚕 死に到りて糸/方に尽き、/蝋炬 灰と成りて/涙 始めて乾く」(李商隠「無題」詩 [唐])。 蚕は春に死ぬまで糸を出し続け、ロウソク(蝋燭)は自ら燃えて最期まで蝋の涙を流し続ける。そのように私は君のことを死ぬまで忘れずに思い続ける。
