◆二元対立の英語感覚◆ 格助詞「の」の英訳 Part02 所有 vs. 時


<名詞1 of 名詞2>: 名詞2が名詞1 に働きかける
<名詞2’s 名詞1>: すでに話題になっている名詞2を使って名詞1を切り出す

香港はかつてイギリス領土だった。⇒所有:~を持っている
△ Hong Kong was formerly a UK’s territory.
⇒ Hong Kong was formerly a territory of the UK.
⇒ Hong Kong was formerly a British territory.


所有の場合は、無生物であるなら、修飾する名詞の後ろから <of 名詞>の形を使うか、形容詞にすればよいわけです。すでに述べたように、<名詞’s > は原則として生物の場合に使います。
 ただし所有の意味をあらわす場合には、<名詞1 of 名詞2>と<名詞2’s 名詞1>とではそこにこめられているニュアンスが異なっています。まず前回述べたように、英語の視点は、対象の外部に視点を置いて、ある対象が何かに働きかける動きを捉えますが、日本語の場合には、なにかの参照点をもとにして共同注視枠を設定して、その参照点を起点にして対象を説明するという方向で進んでいきます。
<名詞2’s 名詞1>、つまり a UK’s territory の場合には、日本語の認知法に近く、<名詞1 of 名詞2>、a territory of the UK の場合には、英語本来の認知法に沿っているといえます。
a UK’s territory では、名詞2’sのこの名詞2 すなわち英国が書き手と聞き手が共同で認知できる参照点としてあって、関心の対象である名詞1すなわち領土であったという説明になっています。ここでは英国は参照点ですから、話題として英国のことがすでにのぼっていて、香港がどこの国の領土であったのかということではなく、中国本土にありながらなんと実は領土であったというメッセージが伝わります。
これに対して、a territory of the UK では、英国が中国に働きかけて自国の領土にしたというメッセージになります。
少し複雑に響きましたが、<名詞1 of 名詞2の形は、名詞2が名詞1 に働きかける、<名詞2’s 名詞1>は、すでに話題になっている名詞2を使って名詞1を切り出すと覚えておけがよいでしょう。

晩夏気温は通常ではイギリスでは10℃代だ。⇒時:~における
△ The late summer’s temperature in England typically stays in the teens.
⇒ The temperature in England during late summer typically stays in the teens.
⇒ The late summer temperature in England typically stays in the teens.

所有の説明が長くなってしまいましたが、所有に似ているのが時をあらわす「の」です。「晩夏気温」は「晩夏が持っている気温」と考えられなくはありません。しかし「の」の前に時をあらわす名詞がくれば、時を示す前置詞 at, during, in, on などをその名詞の前において文中に挿入する必要があります。例文のように一定の期間の場合は during になります。また時をあらわす名詞は便利なことに、例文のようにそのままの形で形容詞として使うことも多くの場合可能です。

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