◆二元対立の英語感覚◆《切断⇔影響》「~したほうがよい」はなぜ過去形 had better か?
過去形=切断 だから 提案にふさわしい時制
過去形は、現在の時点から切断されているという意識がともないます。現在の時点から切断されているのですから、この形を使って述べることは、相手に向かってストレートに投げかけられません。そのために、人に何か助言をしたり提案をしたりするときに過去形を使った方がいいことがわかると思います。
なぜならば現在形ではちょっとやそっとでは動かない事実を相手に向かって突きつけるのですから、そんな脅迫のような形で助言・提案されても、それは助言・提案ではなく命令になってしまいます。そんな現在形に対して過去形の場合、一つ間をおいて、今の時点から切り離された形で、相手に何かを伝えることになるから、助言・提案は過去形が有効です。
そこで思い出していただきたいのは「~をしたほうがいい」というのを英語でなんと言うかです。多くの人はhad betterであると考えるでしょう。これは、「しないより、した方がより良い」のですからbetter。しかしなぜhadなのでしょうか。
時間としては今この時点で何をすべきかと相手に言っているわけですから、日本人の感覚からするならhaveであるはずです。ところが、熟語としてhave better ではなくて、had betterとは覚えさせられます。なぜhaveではなくhadという過去形を使うかといえば、相手に向かって助言をするので、相手に向かって自分の言っていることがあまりにもストレートに命令として伝わらないように過去形を使っているわけです。
なおhad betterは、「特定の状況で相手に対して助言する」のであって、しかもその助言を守らないと「困ったことが起こる」という意味です。「had betterには相手を脅す意味があるので、目上の人には使わない」といった説明がありますが、それはかなり特殊な「特定の状況」です。
You had better hurry if you want to get to the post office before it closes at five.
郵便局は5時に閉まるので、行くのなら、急いだほうがよいですよ。
これは目上の人にも使えますし、脅しの意味はほとんどいってよいほどありません。とはいえ、上のようには、さすが大会社の重役に向かってはいえません。その場合には、
I am afraid you should hurry if you want to get to the post office before five.
should(これも事実上、過去形)は「~すべき」と覚えされられますが、ではこういう状況で目上の人にも使えます。
重役に向かってなぜ had better ではまずいかといえば、better は目下、相手がやっていることに対して、それをやめて、自分が助言するようにしたほうがよいという、相手の現在の振る舞いをやめるようにという否定の意味が入っているからです。上の例文の場合でいえば、ゆっくりとコーヒーを飲んで歓談しているが、それはやめて、急いだほうがよく、急がないと困ったことが起こりますと、これからの予想までをも相手に向かってしている押し付けることになるからです。
過去形がもつ本来の意味については ▶日本語の現在形がなぜ英語では過去形になるのか
過去形が織りなす 綾(あや) については ▶現在完了形と過去形の対立のあや
