◆二元対立の英語感覚◆《切断⇔影響》 今の語りは、現在形ではなく過去形をなぜ使うのか
過去形⇒現在からの切断
子画面の世界
なんとなく人に話したくなる経験談は誰にでもあります。また誰かと話をしている最中に、ふと思い浮かんでくる逸話や伝聞(又聞き)があります。こうした話は英語ではstoryということもありますが、厳密にはanecdoteといいます。
さてこんな話があります。「この前ひどく恥ずかしい思いをした」といって、聞き手の興味をそそります。そして次に、昼時に食堂に行ってビールを飲もうとしたところ、テーブルにあらかじめおいてあったグラスに指が触れて、それが床に落ちて粉々になります。その場面を次のように聞き手に話します。
I was in a bar in Italy, and my glass was sitting empty on the table, and this bar was full of people having their lunch. I must just have caught the edge of the glass with my finger and it fell over. It was like slow motion.
イタリアで食堂に入ったんだ。空のグラスがテープルにのっていて、この食堂、昼飯を食べる人で満席だったんだ。自分の指がグラスの端に触れたようで、グラスがテーブルから落ちていった。それはスローモーションを見ているようだった。
ここで日本人の感覚からするとやや奇妙なのは、this barという言い方です。thisと話し手がいっても、それは今話をしているこの部屋ではありません。話の中のあのときの食堂です。つまり二人はまるで自分から遠く離れた銀幕の映像(子画面)でも見るかのように話をしています。これはそのあとに続くどきどきするような話でも同じです。
It was one of those horrifying moments where everything slows down and you could see it just reach the point balance and then fall, and it hit the floor and completely exploded.
あれは、何もかもがスローに動くぞっとする瞬間なんだなあ。ぎりぎりのバランスをとってから、結局こけて、床にぶつかって、こなごなというわけさ。
どうでしょうか。こんなに生々しく伝えているのに、現在形は使いません。下線部を除いてすべて過去形です。現在から切断されているので、現在形は使えないのです。
なお下線部分が現在形なのは、「何もかもがスローに動く」という条件(確定事実)を述べているからです。ちょうど「水が100度になると沸騰する」といった条件だからです。現在形の本来の意味については ▶「ショーはいつ始まるのか?」はなぜ未来形を使わないのか
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