sea と oceanは本当はどこが違うのか
sea: ゲルマン語系
ocean: ラテン語系
中学1年で海 seaという言葉を習いますが、かつて中1では英語の時間にMy Bonnie lies over the ocean という英語の歌を合唱しました。先生は、oceanは大きな海のことで、太平洋はthe Pacific Ocean、それほど大きくない日本海はthe Japan Seaになると教えてくれました。しかしそれでは、なぜMy Bonnie lies over the ocean のすぐ後に、My Bonnie lies over the sea と歌詞が続くのか、同じ海をさしているはずなのに…という疑問がずっとついて回りました。
この疑問を解いてくれたのが、英語学者・渡部昇一先生でした。英語をそもそも使っていた民族がゲルマン人(ドイツ系)であったのに、イングランドは大陸からやってきたノルマン人(1066年)に征服され、そこで支配者たちが使っていたラテン語やフランス語(いずれもラテン語系言語)がゲルマン系の英語に混じるようになります。こうして英語は言語として一つではあっても、ゲルマン語系とラテン語系二系統の異なった単語をその体内にあわせ持つことになります。seaはゲルマン語系の言葉、oceanはラテン語系です。二系統だからこそ、soul(ゲルマン語系)に対してspirit(ラテン語系)、understand(ゲルマン語系)に対して comprehend(ラテン語系)といういわば類語が生じています。
ある単語がどちらの系統かは、ドイツ語・オランダ語あるいはフランス語・イタリア語のどちらか一方の言語を学べば、見当がつくようになります。それが面倒なら、形容詞を名詞にする場合、語尾に-nessと-ityがつくものを思い浮かべて下さい。
Kind→○kindness, ×kindity (ゲルマン語系)
able→×ableness, ○ability (ラテン語系)
日本語と英語、それぞれの言語の共通点をあげよといわれれば、英語を長年、習ってきても答えにとまどってしまうのではないでしょうか。どちらも二系統の異なった言語が混ぜ合わさってできていると答えるのが正解です。なおこの点について、さらに詳しくは 霊と魂 ラテン語系とゲルマン語系
なおseaについては、次書に興味ふかい説明があります。
古代のゲルマン人はキリスト教がくる前は共通の信仰をもっていた。それは死者の魂は北の海にもどって、また産まれてくる機会を待つというのであった。したがって「魂」を意味するゲルマン語は「海」からの派生語である。古ゲルマン語*saiwaz (海、湖)から、……古英語 Sawol、現代英語 soul というふうになったのである。つまりゲルマン人にとっては海は魂のふるさとという遠い遠い記憶がある。また古いケルト語にmori-marusa という言葉がある。これは「死の海」という意味であるが、具体的には今の北海あたりを指していた。プリニウスは、この海のことを mare mortuum と呼んだが、これは印欧語において、「死」を意味する語と、「海」を意味する語の語根が相通じていることを暗示する。そして死者の魂がまたもとの海に帰り、再び産まれてくるという霊魂観からすれば、「死ぬ」と「産まれる」は表裏一体をなしているようである。
渡部昇一『日本語のこころ』(講談社現代新書)179-80頁
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