spirit と soul <1> その違いはどこにある


spirit: ラテン語系 ⇒ 知的
soul: ゲルマン語系 ⇒ 情的

spiritは精神や霊といった訳語があてられ、soulは魂と訳されるが、この二つの単語の違いを答えられる学生はほとんどいない。まず語源からみれば、spiritはラテン語系すなわち外来語だが、soulの方はゲルマン語系で英語に在来の言葉である。日本語でも中国系譜の漢語と日本在来の大和言葉があるが、それに対応して訳せば、spiritは心というよりも精神や霊魂だし、soulは「こころ」や「たましい」といったほうがよい。そしてこうした訳語からもわかるように、ラテン語系の言葉は知的だし、それにたいしてゲルマン語系のそれは、情緒的である。 

  Spirit系(ラテン語) Soul系(ゲルマン語)
由来 外来 地場
日本語にあてはめる 漢語 大和言葉
気持ち 外向的で他を制する 内向的でなつかしいもの
精神的態度 知的で対象との距離,  対象との一体感, 
理知で責める 相手へのやさしさ
使われる場 論文, 社説 フォークソング, ラブレター

こうした違いがわかると、次の例のように、名詞と動詞にみられる類義語はほとんどが語源の違いであることがわかるし、それぞれの言葉が伝える意味合いの差も浮かび上がってくる。

ocean ⇔ sea
male ⇔ man
female ⇔ woman
emperor ⇔ king
decade ⇔ ten years

give ⇔ provide
send  ⇔ transmit

 なお使われる場についてだが、論文はすべてラテン語系の単語で書かれているわけではなく、その比率が高いということであり、同じく、フォークソングはゲルマン語系の単語だけが使われているわけではなく、パンチを効かせるためにラテン語系の言葉が織り込まれたりもしている。だから随筆は柔らかい内容のものであるなら、ゲルマン語系の単語が多用されるし、その逆に、学術性を帯びている堅い内容のものにはラテン語系の言葉が圧倒的に使われる。 以上の内容を、柔らかいエッセー風に言い換えてみた文書を参照。

 また、ある単語がどちらの系統かは、ドイツ語・オランダ語あるいはフランス語・イタリア語のどちらか一方の言語を学べば、見当がつくようになる。それが面倒なら、形容詞を名詞にする場合、語尾に-nessと-ityがつくものを思い浮かべればよい。

-nessが付けばゲルマン語系  
 Kind→○kindness,  ×kindity ⇒ゲルマン語系

-ityが付けばラテン語語系  
 able→×ableness,  ○ability ⇒ラテン語系


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